阪神・森下 後半戦復調の要因は「10センチ」の構えの変更 梅野の一言が若虎を救った
本紙阪神担当が24年シーズンを深掘りしながら振り返る「虎番プレーバック2024」。2年目だった阪神・森下翔太外野手(24)は前半戦、打撃不振で2軍降格を味わった。後半戦は一転、主軸らしい活躍でチームを支えた背番号1。復調の要因は、梅野隆太郎捕手(33)の一言による「10センチ」の構えの変更にあった。 ヒントはどこに転がっているかわからない。森下は今季、苦手だった内角をよく打った。12日の契約更改で「去年より内角の打率が上がった」と語ったように、同コースの直球は打率・351(57打数20安打)をマーク。新人だった昨季の・258(66打数17安打)を大きく上回った。 克服の転機は、球宴休み期間の7月24日に行われたシート打撃。マスクをかぶる梅野の一言で霧が晴れた。 「もうちょっと投手寄りにバットの位置を構えていなかったっけ?って。ハッと気付かされました。練習が終わって、去年の映像を見直したら、確かにずれていたんです」 それまでは、右肩付近にバットをまず乗せ、その位置からヘッドを起こして構えた。バットを握る手が耳の横にあるイメージだ。この位置だと、いざ投手を向いた時に手が見えなかった。視界に入るよう、投手寄りに10センチほど微調整。驚くほどの効果があった。 「肩の上に構えた方が力が入る。でも、それだとテイクバックで引きすぎて、2度引きになる。顔の前で構えると感覚は気持ち悪いけど、テイクバックの引きすぎが解消されて、内角も対応できるようになりました」 当時はどん底の状態だった。岡田監督(当時)に「スイングを改善するまで2軍」と命じられ、2週間のファーム生活。昇格後も試行錯誤は続き、復帰カードだった7月19日からの広島3連戦は13打数1安打と苦しんだ。 暗闇に差し込んだ光が、7・24の練習中の梅野の助言。「10センチ」の微調整と、猫背気味だった構えをやめて背筋を伸ばしたことが吉と出た。昨年からの技術向上、岡田監督の教えもプラスに働く。内角を苦にしなくなると、内角の打率に直結した。前半戦は打率・250(72打数18安打)だったのが、後半戦は同・306(36打数11安打)に上昇。相乗効果により球宴前76試合で・224だった打率が、その後の53試合は・344と劇的に良化した。優勝争いに加わる原動力になっただけでなく、11月の国際大会「プレミア12」では侍ジャパンの4番を任されるまでになった。 「構えが決まれば打てる」というのが持論。悩み抜いて正解にたどり着いた経験は、この先にも必ず生きる。 (倉世古 洋平) ○…森下(神)は前半戦終了時の打率.224から、同.275まで上げてシーズン終了。球宴後の打率.3435は、坂倉(広=.350)、近本(神=.3441)に次ぐリーグ3位の好成績だった。 ○…前半戦と後半戦の球種別打率を見ると、直球.225→.400(80打数32安打)、スライダー.167→.346(26打数9安打)、ツーシーム.368→.571(7打数4安打)、フォーク.174→.333(24打数8安打)と、後半戦は直球に限らず多くの変化球で対応力が上がっていた。