“手取り増やす議論の最中に増税決めるのは…”防衛所得増税時期3度先送り「学生バイトの壁」150万円に引き上げだと親の手取りは?
防衛費を増やすための増税をめぐり、自民・公明両党は、所得増税の開始時期を2024年は決めないことにした。「103万円の壁」について、与党側から「123万円」に引き上げる案が示されたが、国民民主党は拒否した。 【画像】子の年収上限が150万円に引き上げられた場合、親の手取りはどうなる?400万円・600万円・800万円の場合をシミュレーション
「103万円の壁」めぐる議論に逆行
政府・与党は、2022年末に、将来の防衛財源を確保するため、法人・所得・たばこの3つの税を段階的に増やし、2027年度までに1兆円強を確保する方針を決めている。このとき、増税の開始時期は「2024年以降の適切な時期」とするにとどめられ、2023年末の税制改正でも、決定が見送られていた。 ”今年こそはー”。2024年末には増税を始める時期を決めて、2025年度税制改正大綱に盛り込む方針だった政府・自民党は、12日に詳細な案を示した。 法人税は、2026年4月から課税標準の税額から500万円を差し引いた額に4%を付加する「防衛特別法人税(仮称)」を新設し、たばこ税は、2026年度に加熱式たばこの税率を引き上げて紙巻きたばこにそろえ、その後、たばこ全体の税率を2029年4月にかけて3回に分け1本あたり0.5円ずつ引き上げる。 所得税については、2027年1月から所得税額に1%上乗せする「防衛特別所得税(仮称)」を設けるという内容だ。所得税額に1%分上乗せする一方で、現在課せられている「復興特別所得税」の税率は1%引き下げられるので、当面の所得税負担は変わらないものの、2037年までとしている復興特別所得税の課税期間は延長される。 事実上の負担増ととらえられる可能性がある中で、難色を示したのが公明党だった。「103万円の壁」をめぐり手取りを増やす議論をしているのに、逆行する話になるなどと慎重論が相次ぎ、所得増税については開始時期の決定を先送りすることになった。
”103万円を123万円に” 国民民主「話にならない」
「103万円の壁」をめぐっても、新たな動きがあった。 自民・公明両党は13日、大半の納税者が対象になる「基礎控除(48万円)」と会社員などの経費にあたる「給与所得控除の最低額(55万円)」を10万円ずつ上げて、所得税の非課税枠となる年収水準を「103万円」から「123万円」に引き上げる案を示した。ここ30年間で生活必需品の物価がおおむね2割上がったことを踏まえたとしたうえで、2025年分所得から適用することも提案したが、国民民主党は「話にならない」と一蹴した。 一方、もうひとつの「103万円の壁」となっている、親が税負担の軽減を受けられるしくみでの学生の子のバイトなどの年収上限について、自民・公明両党は、国民民主党の要求を踏まえ、「150万円」への引き上げを軸に最終調整に入っている。上限を超えた場合も、世帯の手取りが減らないしくみをつくることも検討する。 19歳以上23歳未満の子どもがいる親などに適用される「特定扶養控除」では、子どもの年収の上限が103万円となっていて、この水準を超えて対象から外れると、親の手取りが減って世帯全体の手取りが減少するため、バイトの勤務調整をする学生が多く、若い世代の働き控えを招いていると指摘されてきた。
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