「アプローチはショットの一部だと思っていた」2024年に3勝を挙げて大ブレークした幡地隆寛の勘違い
ドライビングディスタンスのタイトルを獲るなど、飛距離には定評があった幡地隆寛だが、30歳までは優勝に縁がなかった。それが昨年、2月のアジアンツアー「ニュージーランドオープン」で優勝すると、国内男子ツアーでも5月の「関西オープン」、9月の「バンテリン東海クラシック」でも2勝を挙げるなど大ブレークを果たした。東北福祉大学時代は「打ち方が分からなくて、ひたすら下手だった」というアプローチの勘違いとは? 【連続写真】ハンドレイトでもトップしない! 幡地隆寛のボールがゆっくり飛ぶアプローチ 「もともとアプローチはショットの一部だと思っていました」と幡地はいう。地面にあるボールを打つためには、アイアンと同じように上からダウンブローに入れてハンドファーストに打つものと考えていた。ヘッドが刃から入るため、地面に刺さってチャックリすることも。そこで逆転の発想で、ハンドファーストではなくハンドレイトのイメージに変えてから、アプローチの調子が上向いていく。 「ヘッドを出す打ち方にしました。パッティングとかバンカーショットに近いですね。バンカーはすごく得意だったけど、バンカーとアプローチが別物だと思ったがゆえになかなか気づけなかった。PGAの選手たちもヘッドが先に出ていくイメージがあったので、バンカーと同じようにアプローチをしてみたら、どんどん良くなってきました」 以前はボールを右足寄りに置き、アドレスから手を目標方向に出してハンドファーストに構え、手首を固めて打っていた。それを現在はボールをスタンスの中央に置き、正面から見てシャフトは真っすぐ、少しハンドレイト気味に構えている。 「フェースを開いてフェースがずっと自分を向いているイメージで、ヘッドが手より後ろにいかないように打つ。本当にバンカーと同じ打ち方です。同じ感覚でフェースを閉じて同じように振ると、ようやくアプローチでバンスが使えるようになりました。みんなが言っている感覚はこれかと(笑)。ソールの後ろ側が地面に当たるようになります」 手元を先行させて手首を固めてしまうと刃から地面に入りやすい。手首をタテにやわらかく使うことで、ソールが滑ってフェースにボールが乗る。球を低く出したいときには打ち方を変えずに、「52度とか56度のウェッジを使います」。 ハンドファーストに手首を固めて打っていた人からすると、本番で試すのは怖い。幡地自身も「練習ではできても、試合になるとビビってできなかった。安全な打ち方をやってしまっていた」という。プロは試合で成功しないと、アプローチのバリエーションが増えていかない。「思い切って試合の集中した中でやるようにしたら、上達しました」。ツアープロ生活9年の生涯獲得賞金(約1億6千万円)のうち、およそ半分を昨年稼いだ幡地。30歳を過ぎても進化できることを見事に証明した。 ■幡地隆寛 はたぢ・たかひろ/1993年生まれ、広島県出身。188センチの長身を生かしたドライバーショットはキャリーで300ヤードを超える。ツアーデビューは2016年で、初シード獲得までは6年を要した。プライベートでは「下部ツアーに出ているときから支えてもらっている」という年上の志保さんと21年に結婚している。 ◇ ◇ ◇ ●幡地が飛躍を遂げた陰にはこだわりのクラブセッティングがある。関連記事の【ウソだろ!? 幡地隆寛愛用のアイアンは、6番のロフトを寝かせて7番として使っていた!】では、アイアンの番手ズラしの理由についてレポートしている。