私にコーチをさせてください
コーチという仕事をするようになってから「リーダー」「リーダーシップ」という言葉を口にしない日はありません。 真のリーダーとは、誰を指すのか? 優秀なリーダーは、どのようなリーダーシップを発揮しているのか? そういう私自身は、リーダーに値するのか? クライアントに問いながら、常に私も一緒に考え続けています。 リーダーとは、結局何をする人なのでしょうか? 自分に必要なリーダーシップはどうすれば手に入るのでしょうか?
「理想のリーダー」とは
私のキャリアにおける最難関の転換期にも、同じ問いを毎日毎日考えていました。 前職で経営企画部長をしていたとき、ある事業を買収し、その事業部長に抜擢されました。 そのときの私にとって理想のリーダーとは、 ・事業のビジョンを明確に描ける人 ・大勢のメンバーをモチベートしてゴールに導く人 ・その集団の目的を実現させる実力を一番持っている人 という絶対的なイメージがありました。 買収した事業にド素人の私は、これらのどの項目にも当てはまりません。しかし、この事業は中期計画の期待の事業として拡大路線を描いていましたし、買収した会社の社長は辞めることも決まっていたので、誰かがすぐにトップに立つ必要がありました。
飛びこんではみたものの
買収した事業会社の元社長は、ゼロから事業を立ち上げ10年で軌道に乗せた、カリスマ性のある女性でした。引継ぎで取引先や現場を一緒にまわり、彼女のリーダーぶりを目の当たりにして、 「この組織におけるトップの動き方ってこうなんだな、この人のやり方が『正』なんだ、だから成功したんだな」 と学ぶと同時に、私の理想のリーダー像を体現している彼女と自分を比較して、 「この人と同じことは私にはできない」 と、出足から敗北感を味わいました。 他にも、様々な葛藤がありました。 ・「経営企画だったお前に、事業ができるのか」と同僚から思われているのではないかという妄想 ・状況として自分が適任であることは理解しているものの、本来自分がやりたかったこととはかなり違う役割を担わなければならないというジレンマ ・カリスマ社長の下で育ってきた社員たちが、急にトップにたった私をすぐに受け入れてくれるわけもなくアウェイな状態 ・専門性の高い事業のため、部下の方が業務をよく知っているという情けなさ ・「あなたならできるよ」「変えてみせてよ」「とにかくうまくやってくれ」という上司からの曖昧な期待 ・何からやればいいかわからず、頭は白紙なのにどんどん埋まる過密スケジュール とはいえ、難関だからこそやり遂げたいし、抜擢して正解だったと思われたい。リーダーシップに関するビジネス書を読み漁りつつ、がむしゃらに目の前のスケジュールをこなす毎日でした。