食品界、4月からの変化 ドライバー残業規制開始 無添加表示注意も 値上げに歯止めかからず
新年度の始まりとなる4月は、食品界の経営に影響を及ぼす制度や仕組みの変化が相次ぐ。最大の焦点はドライバーの時間外労働規制の適用開始で、製配販3層がこれまで準備してきた物流危機回避への取組み成果が試される。消費者の誤認を防止する無添加表示の規制強化も本格施行され、企業はパッケージの強調表示に十分な注意が必要だ。コストアップを背景に4月以降の食品値上げも継続する見通しで、障害者の法定雇用率引き上げといった企業が社会的責任を果たす役割も増大する。 ドライバーの時間外労働は19年の改正労働基準法施行から5年の猶予期間を経て、4月1日から年960時間の上限規制が始まる。食品界では人手不足と輸送能力の低下に伴う物流機能不全(いわゆる物流「2024年問題」)の発生も懸念され、ここまで業界各社・団体はドライバーに過度な負担を強いる商慣習やルールの是正へ努めてきた。今国会では政府が物流規制法案の成立を目指すなど、国を挙げて物流危機の回避を急ぐ。 それでも「2024年問題」は蓋を開けてみなければ、影響がどう出るか未知数だ。持続可能なサプライチェーンの構築へ尽力してきた日本加工食品卸協会・時岡肯平専務理事は「ここまで打てる手は打ったが、大事なのはこれから。ドライバー不足は容易に解消されず、各業界は自主行動計画の順守と施策のスピードアップに努力することが必要」と指摘。「残業規制が始まる中、特に最大の物量が動く年末の繁忙期を乗り切れるか動向を注視していく」と気を引き締める。
「無添加」表示の規制強化
消費者庁が22年3月30日に公表した「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」は2年間の猶予をもって、4月1日から同ガイドラインに基づく食品添加物表示へ完全移行する。 単なる「無添加」や食品表示基準に規定されていない「人工」「合成」「化学」など10類型の表示が禁止され、事業者が改善指示・命令に従わない場合は1億円以下の罰金が課される。28日現在、東京都内のSM店頭では無添加対象が不明確な「無添加」表示の調味料や嗜好品も散見され、規制強化直前の業界認知の浸透レベルに懸念も残る。
価格改定相次ぐ
4月から電気やガス、宅配などの料金が値上げされ、政府が物価高騰対策で実施してきた負担軽減措置の5月終了(電気、ガス代)へ調整に入ったことも明らかとなった。家計負担が増える一方、食品界では原材料や人件費の高騰に伴うハム・ソーや果実飲料、納豆、海苔などの価格改定が相次ぐ。 大手企業を中心とする32年ぶりの高水準の賃上げが中小零細へ及ばない中、実質所得の減少に伴う食品消費への影響が懸念される。ここへきてPB商品含む値下げへ乗り出す大手小売チェーンも出てきたが、食品界は物流の持続可能性の確保も視野に、適正利益に基づく販売努力を継続する姿勢が必要だ。
日本食糧新聞社