巨人がライデル・マルティネスと超大型契約!守護神に「NPB最高年俸」の価値はあるか?
◆ 守護神の存在が重要であることは間違いないが… 今季、4年ぶりのリーグ優勝を飾った巨人が連覇に向けて着々と戦力補強を進めている。 17日にソフトバンクからFA権を行使していた甲斐拓也を獲得。また、その前日の16日には、中日から自由契約となっていたライデル・マルティネスとの契約合意を発表していた。 巨人が次々と大物獲得を成功させる様は「金満経営」と呼ばれたかつての戦略を想起させる。特に同リーグのライバル球団からマルティネスを“引き抜いた”ことは、これ以上ない補強となったはずだ。 マルティネスは中日に所属した過去7年間で通算166セーブを挙げた球界屈指のクローザー。特に直近の3年間は、防御率0.97、0.39、1.09と、まさに無双状態を続けている。 今季まで守護神を任されていた大勢がセットアップ役に回り、マルティネスへと続くブルペンは他球団にとって脅威となるだろう。 ただし、4年総額50億円規模とみられるマルティネスの契約が妥当かどうかは、数年待ってみないと分からない。 正確な契約内容は球団の発表待ちだが、年俸は12億円以上とみられる。これはソフトバンク・オスナの10億円を抜いてNPB最高額。つまり、現時点でNPBの高給取りワンツーはどちらも守護神ということになる。 先発投手の完投が当たり前でなくなった現代野球において、救援投手、特に守護神の存在は非常に重要であることは間違いない。しかし、NPBではその存在がやや過大評価されていないだろうか。 守護神は球威や制球力はもちろん、それ以上に精神的なタフさ、心臓の強さが求められる。マウンドに上がるのは、1点も許すことができない緊迫した場面がほとんどだ。その心労はその役割を担った者にしか分からないだろう。 ただイニング数にすると、年間50回から多くても70回。平均的な先発投手の半分から約3分の1程度でしかない。 たとえば今季のマルティネスは、チーム最多タイの60試合に登板したが、イニング数はチーム8位タイの58回。対戦した打者の数は217人だった。 これは打者の視点で見れば、シーズンで217打席に立っていたのと同じこと。規定打席数(443打席)の半分にも満たない数字である。 登板するのは勝敗を分ける最も重要な場面がほとんどとはいえ、NPB最高年俸の価値があるかどうかは賛否分かれるところだろう。 ちなみにメジャーリーグでは、全投手を年俸順に並べると、上位20人までが先発投手。救援投手の最高額は、21位に登場するエドウィン・ディアス(メッツ)だった。 また、年俸1000万ドル(約15億5000万円)以上の投手は約70人いるが、内訳は先発が約60人、救援が約10人となっている。 ただでさえ投手は打者に比べると、故障が付き物。マルティネスはその頑丈さも強みの一つではあるが、10億円を超える年俸は大きな賭けであることに違いない。 果たしてマルティネスは今後数年間にわたって額面通りの価値を球団にもたらすことができるのか。連覇に向けてマルティネスの存在も大きなカギとなりそうだ。 文=八木遊(やぎ・ゆう)
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