富士ソフト買収で飛び交うKKRとベインの奇手奇策、会社の頭越しに前代未聞の手法を駆使
富士ソフトの株主構成は、アクティビストや創業家の持ち分を除けば、ほとんどが金融機関やファンド名義での保有だ。政策保有株式として持つ事業会社もほとんどおらず、KKRとベインどちらのTOBに応募するかの票読みは容易ではない。 KKR自身、「(ベインの計画は)どの程度信憑性があるものかが明確でない」と批判する傍ら、「(ベインが本当にTOBを行うか否かを)見極めたいと考える株主がいることも理解する」姿勢も示している。
■2段階TOBでベイン封じ込めへ そこで、ひとまずアクティビストの3Dインベストメント・パートナーズおよびファラロン・キャピタル・マネジメントなど、応募契約を結んだ大株主の持ち分32.68%を買い付ける。1回目のTOBで53%の株式が集まらずとも、一定割合をかき集められればベインによるTOB成立の公算は小さくなる。 2回目は、ベインがTOBを断念した場合に発動される。KKRよりも高値を提示したベインに売り抜ける“アテ”が外れた株主に狙いを定め、10月下旬をメドに同じ1株8800円でTOBを行う。
ベインのTOBの成否が判明した後でも応募の機会を提供することで、非公開化に必要な株数の取得を目論むほか、一般株主が売り急がざるをえない「強圧性」の問題を回避する。 2段階TOB自体は前例がないわけではないが、いずれもファンドや創業家といった大株主と、それ以外の一般株主とで買い付け価格に差をつけることが目的だ。対照的に、KKRは1回目と2回目の買い付け価格が同じであり、もっぱらベインの介入への対抗策と位置づけられている点で異例だ。
からめ手の末、富士ソフトはどこに漂着するのだろうか。今後のシナリオは3つありそうだ。 1つ目は、KKRが1回目のTOBで当初の下限株式数の53.22%を取得すること。ただ足元の株価は依然としてKKRの買い付け価格である8800円を上回っており、十分な応募が集まるかは不透明だ。 KKRが1回目で非公開化にこぎ着けられなければ、ボールはベインに渡り2つ目のシナリオが浮上する。11月にもTOBを仕掛けて首尾よく過半の株式を取得し、富士ソフトの非公開化を完了させることだ。