韓国のベストセラー作家イ・スラが“家女長“の視点で語る未来
家女長として成長していく過程をしっかり描くために、苦しい時期を乗り越えてきたこと、弱さや未熟さをきちんと描くことが必要だと思います。
――娘が家族を支えるという新しい考え方を提唱し、韓国をはじめ台湾や日本でも注目を集めています。そうした立場に対してプレッシャーを感じることはありますか?
スラ:新しい価値観の先駆者として取り上げられることに、負担を全く感じないわけではありません。それでも、誰にも読まれないという状況を避けるため、多くの人に届けることを最優先に考えています。誤解なども受け入れる覚悟で、読んでもらうことを目指しています。
――スラさんはファッションアイコンとしても人気ですが、イベントやSNSの投稿でも、個性的で流行に捉われない着こなしが印象的です。
スラ:子供どもの頃から20代まで、母がユーズドショップを経営していた影響で、古着をよく着ていました。その中には日本の古着もあって、いろんなコーディネートやスタイルを楽しみました。自分の好きなものを自由に着る感覚はその時に培ったのかもしれませんね。
――ファッションやヘアスタイルは個性を表現する要素のひとつでありながら、表現方法はリアルからバーチャルまで益々多様化しています。スラさんにとって、「自己表現」とはどのようなものでしょうか?
スラ:若い頃には多くの人が似た経験をするかもしれませんが、10代の頃は外見に対するコンプレックスが強く、鏡を見たくありませんでした。韓国ではアイドルのように痩せていて、目鼻立ちがはっきりした人が理想とされる価値観も関係していました。
外見に対する不安を抱えていた私が、自分らしく生きるきっかけをつかんだのは、作家になる前の絵画のヌードモデルの経験です。美大へ行き、油絵を描く人たちのモデルをしながら気づいたのは、彼らの絵に映る人物が不思議と書き手自身に似ていることでした。他人を見ているようで、実は自分を投影している人が多いのだと気づいて以来、周りの視線を気にしすぎず、心が軽くなりました。