JR3社決算で浮き彫り、好業績のJR東がこれから直面する「経営リスク」とは?
● JR本州3社でJR西日本だけが 営業利益が減益になった理由 続いてJR西日本だ。営業収益は対前年度同期約414億円増(約5.4%増)の約8113億円。セグメント別にみると、モビリティ業は同約304億円増(約6.4%増)の約4960億円、不動産業は同117億円増(約11.5%増)の約1138億円だった。 鉄道旅客収入を見ると、新幹線は北陸新幹線敦賀開業効果で約304億円、近畿圏の定期・定期外収入が約68億円、全体では約274億円の増収となった。数が合わないのは近畿圏以外つまりローカル線の定期・定期外収入が約98億円減という大幅な減収となったため。 これだけ書くとローカル線に何があったのかと心配になるが、これは敦賀開業で北陸本線敦賀~金沢間が経営分離されたことによるもので、基本的には全体的に回復基調にある。 ただ能登地震の影響で関西・中京~北陸間の在来線特急「サンダーバード」「しらさぎ」の利用が低調だったこと、8月の台風7号、10号による計画運休、南海トラフ地震臨時情報発表の影響で出控えがあったことで、運輸収入は計画値を3%下回った。 営業利益は同約15億円減(約1.4%減)の約1048億円。モビリティ業は同約45億円増(6.4%増)の約750億円、不動産業は同約10億円減(4.7%減)の202億円だった。 今回の決算で営業利益が減益となったのはJR西日本だけだが、これは大阪ステーションホテルが7月31日に開業したことにより減価償却費など費用が増加したことと、旅行・地域ソリューションのコロナ関連受託事業が終了したことで、営業収益が85億円の減収、営業利益が65億円の減益となった影響だ。
● 東海道新幹線の需要回復で 好業績となったJR東海 JR東海の業績は東海道新幹線が左右する。営業収益は対前年度同期約563億円増(約6.9%増)の約8739億円。セグメント別にみると運輸業は同約475億円増(約7.1%増)の約7137億円、うち東海道新幹線の鉄道営業収入は同約426億円増(約7.2%増)の増収だった。 同社の月次情報によれば、東海道新幹線の利用は昨年度からもう一段回復している。昨年度上半期の輸送量は対2018年度で90%だったが、今年度は93%となった。その中で8月はJR西日本と同様に台風と地震の影響で83%にとどまったため、実際は数字以上に回復していると言えるだろう。 同社広報部は「お盆期間における南海トラフ地震臨時情報と台風に伴う計画運休による影響は、期間が重なっていたこともあり個別の影響を示すことは難しいが、台風10号の接近に伴う計画運休では、東京口の断面輸送量が2018年度比で概ね8~9pt押し下げられたと推定できる」と説明する。 もうひとつ注目したいのは平日の利用が戻りつつあることだ。昨年度上半期の平日の輸送量は対2018年度で86%、下半期は同91%だったが、今年度第1四半期は92%、8月は前述のとおり台風と地震の影響で79%だったが、9月は93%、10月(10月28日時点速報値)は96%を記録している。 土休日利用はインバウンド需要を追い風に引き続き好調に推移しており、8月を除き対2018年度で100%を超えた。列車種別ごとにみると、「ひかり」「こだま」は同85%程度と低調だが、「のぞみ」は第1四半期で同101%、8月の影響を受ける上半期でも同98%まで戻っている。 この結果、営業利益は同約531億円増(約17%増)の約3652億円。運輸業は同約514億円増(17.7%増)の約3412億円となった。運輸業の営業収益は対2018年度で約54億円減(2019年10月の消費税率改定の影響は加味しない)まで回復したが、営業利益は約305億円の減となっている。これは「のぞみ」最大毎時12本化の影響などで営業費が増加したことによるものだ。