JR3社決算で浮き彫り、好業績のJR東がこれから直面する「経営リスク」とは?
JR本州3社は10月31日に中間決算を発表した。各社とも昨年度に引き続き鉄道事業の回復が進んでおり、JR西日本の営業利益が微減したのを除き、いずれも増収増益となった。一方で、アフターコロナにおける厳しい財務状況も浮き彫りとなった。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也) 【この記事の画像を見る】 ● JR東日本の成長を 牽引する不動産事業 JR東日本から見ていこう。営業収益は対前年度同期約953億円増(約7.3%増)の約1兆3951億円。セグメント別にみると運輸業は同約503億円増(約5.6%増)の約9525億円、不動産・ホテル業は同270億円増(約15%増)の約2072億円だった。 新幹線の鉄道営業収入は約228億円の増収となり、運輸業の増収の半分近くを占めた。JR東日本は他社に比べて新幹線の利用の戻りが遅かったが、輸送量は今年度に入って前年度比で10%近い増加が続いている。特に北陸新幹線は敦賀開業後、首都圏からの利用が増えており、15~20%の増加が続いている。 営業利益は同約408億円増(約22.8%増)の約2356億円。運輸業は同約285億円増(25%増)の約1424億円、不動産・ホテル業は同約129億円増(28.8%増)の576億円だった。 今年度末には高輪ゲートウェイシティが第一期開業し、2026年春には残る区画も開業予定だ。通常稼働時の営業収益は約570億円を見込む。また2026年3月には大井町駅隣接地の業務用地を再開発する「大井町トラックス」がまちびらきを予定しており、こちらも営業収益を約130億円と見込んでいる。 同社は地域特性にあわせた社有地開発、マチナカ不動産の取得・開発を強化するため、JR東日本不動産とJR東日本不動産投資顧問を設立。取得・開発した物件をファンドに売却し、獲得した資金を成長分野に再投資する回転型ビジネスを強化している。2026年以降のまちびらきを予定する船橋の社宅跡地開発は約370億円の営業収益を見込む。 2024年6月に策定した中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」は、2033年度におけるIT・Suica、不動産・ホテル、流通・サービスの営業収益、営業利益を対2023年度で倍増させる目標を掲げている。 これが達成された場合、営業収益の運輸業と関連事業の比率は現在の7対3から5対5となり、営業利益では関連事業が3分の2に達する。成長のエンジンとして、不動産事業の役割はますます高まっていくだろう。