「僕は手足を失った“だけ”」なくなることはないネガティブな日との付き合い方 ― YouTuber山田千紘さん #今つらいあなたへ
自分と向き合うことで、他人と比較する機会が減っていった
――山田さんのYouTubeのコメント欄を見ていると、視聴者との距離感がすごく近いなと感じます。 山田さん: 直接会ったことはないけど、自分のことを応援してくれているなんて、それだけで嬉しいじゃないですか。だから僕は、そういった人たちの声を近くで聞けるように、コメントやDMにはすべて目を通しています。 人生が線路だとして、僕がその線路を進む電車だとしたら、どこの駅に止まってもいいし、誰を乗せてもいいですよね。僕を応援したいって言ってくれる人をみんな僕の電車に乗せてもいいわけで。僕は友だちや家族だけじゃなくて、YouTubeの登録者やSNSのフォロワーもみんな、一緒に線路を進んでいく心強いパートナーだと思っているんです。 ――SNSで発信するからこそ、心ない悪意にさらされる場面もあると思います。 山田さん: そうですね、中にはひどいコメントを言ってくる人もいます。でも、そもそもすべての人から好かれる人なんていないと思うんです。十人十色という言葉があるように、いろいろな意見があるのは当然なので、受け止めるしかない。そこに対して怒りや悲しみの感情が生まれることはまったくないですね。そうしたコメントに対して一喜一憂して、自分の時間を使うのはもったいないと思っています。 ――自分と他人を比較することもないのでしょうか? 山田さん: 昔は他人との比較ばかりしていましたけど、そう考えるようになってからは、なくなりましたね。 学生時代を振り返ってみても、同じ学校でクラスメイトでもそれぞれ趣味嗜好って違うじゃないですか。それぞれ違う人生を歩んでいるから、比べたところで意味がない、と思うようになりました。それに、他人のことを見る前に、まずは自分のことを見た方がいい。自分と向き合っていれば、他人と比較することも減ると思うんです。 ――山田さんは、どうやって自分と向き合っているのでしょうか。 山田さん: 僕は、よく瞑想しています。朝、支度をする前の5分だけ目を閉じるんです。グッと目を閉じて、すべての光を遮断して静かにしていると、自然と心が落ち着いてきます。そうすると、昨日の自分のああいうところはダメだったなとか思っちゃうこともありますが、だったら今日はそれをやらないように気を付けようと思うようにしているんです。 自分と向き合うって、結局はその繰り返しなのかも。すぐに何かが変わることはありませんが、日々の積み重ねによって、少しずつ変化が生まれればいいかなって思っています。 ----- 山田千紘(やまだ ちひろ) 神奈川県出身。1991年9月22日生まれ。20歳の時、会社から帰宅途中に電車にひかれ利き手と両足を失う。現在は一般採用で航空関連会社に勤務。YouTube「山田千紘 ちーチャンネル」では片手で料理をする様子や坂道・階段チャレンジ、モーニングルーティンなどを配信し、2021年6月時点のチャンネル登録者数は10万人超。 文:早川大輝 制作協力:Viibar