かつて「小売りの雄」 百貨店が消える?
かつて百貨店は「小売りの雄」と呼ばれた。コロナ禍での売り上げの落ち込みからは回復したものの、小売業界におけるプレゼンス低下を克服する道は見通せていない。
日本百貨店協会によると、2023年の百貨店の売上高は前年比8.8%増の5兆4211億円で、3年連続で増加した。新型コロナウイルスの感染が拡大する前の19年と比べると5.8%減で、ほぼ回復している。訪日外国人(インバウンド)への売り上げは、前年比で約3倍の3484億円と過去最高となった。
同協会の統計をみると、百貨店業界の売上高は1950~60年代にかけての高度成長期から右肩上がりを続け、バブル景気が終焉(しゅうえん)した91年にピークを迎えた。 売上高の構成は時代とともに変化してきた。65年、91年は衣料品が4割強を占め、食料品が2割弱だった。2023年になると食料品が27.4%と最も多くなり、衣料品が26.9%で続く。23年で大きな割合を占めるようになったのが「雑貨」だ。宝飾品や美術品、化粧品といったものが含まれ、富裕層やインバウンドの購買意欲が強いという。
一方、小売業界における百貨店の地位低下は顕著だ。同協会と経済産業省の統計を基に、業態別に13年と23年の売上高を比較すると、百貨店が15%減少しているのに対し、スーパーは17%、コンビニは22%と、それぞれ伸びている。特にインターネット通販(EC)は59%増で、急激に上昇している。