ノーベル化学賞のハサビス氏、AI創薬で「来年に臨床試験に入る」「開発は順調だ」
たんぱく質の構造を推定する人工知能(AI)「アルファフォールド2」を開発し、今年のノーベル化学賞を受賞する英グーグル・ディープマインド社のデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)(48)が、東京都内で読売新聞などの共同インタビューに応じた。ハサビス氏はAIが「過去の発明の中で最も有益な技術になる」と語った。悪用を防ぐのは「簡単ではない」とした一方で、「人類の創意工夫で解決できる」との見通しを示した。 【図】一目でわかる…生成AIの仕組み 便利さの裏に「危険な顔」
アルファフォールド2は世界で200万人以上が利用している。最も活用が進むのが創薬分野で、ハサビス氏も新会社を作り開発に乗り出した。ハサビス氏は21日、自社の新薬について「来年、臨床試験に入る。開発は順調だ」と明かした。
今後のAIの活用先については「生命科学研究だけでなく、新素材の開発、効率の良い電池の設計のほか、数学の未解決問題を解くのも楽しみだ」と語った。将来は人間の「補佐役」として日常生活を助けるAIエージェントが登場し、「生活をより良いものにする」と話した。
このためには、AIが周りの状況を認識し、様々な作業の計画を立てたり実行したりするシステムが必要だという。ハサビス氏は、このシステムについて「4、5年後には構築を始められるだろう」とも話した。
今後、人間の知能に近い汎用(はんよう)的なAIが登場すれば、悪用のリスクが高まるという課題も指摘した。ハサビス氏は「解決は可能と信じているが、AIには未知の部分も多い。私は悲観と楽観の中間的な考え方だ」とした上で、「AIをどう使うか、国際社会で議論する必要がある」と語った。