「STAP細胞」は何がすごいのか? 世界の科学者はこう見る
ヒトにもあてはまるのか
「血球細胞を一時的に低pH下に置くことで多能性細胞に変換できると示したことは、注目に価します。今回の細胞は、いくつかの点において、胚性幹(ES)細胞とは異なる性質をもっています。『(試験管内で)ほとんど自己増殖できない』、『ES細胞は胚盤胞に導入しても胎盤組織には分化しないが、今回の細胞は胎盤も形成できる』といった点です。実験はマウスによるものですが、ヒトでもあてはまるのかを検証をすると、より興味深いと思います」(フィオナ・ワット教授 ロンドン大学 キングスカレッジ 幹細胞・再生医療センター)
幹細胞生物学の新たな時代開く
「論文は画期的であり、幹細胞生物学の新たな時代を開くものです。植物と同じように、ほ乳類の細胞であっても細胞の分化には環境要因が決定的な役割を果たすのです。生まれたばかりのマウスから採取した細胞を適切な環境に置くことで、胚性幹細胞の性質を持ち、マウスの胚の形成にも用いることができます。 この手法は革命的なものです。科学者がこれまでに試みてきた、ゲノムと環境の相互作用という手法とは根本的に異なります。しかし、この成果によって幹細胞が臨床応用に近づくというわけではありません。今回の手法で作成された細胞に対しても、これまでの手法で作成されたものと同じように予防措置をとる必要があるでしょう」(デュシュコ・イリック博士 ロンドン大学キングスカレッジ幹細胞講座准教授)
最も簡単でコストを抑えられる方法
「小保方先生が開発した技術は、成熟した細胞から多能性細胞を作るために最も簡単でコストを抑えることが可能な方法です。ヒトの細胞でも使えるようになれば、患者自身の細胞を使って細胞治療ができるようになるでしょう。オーダーメイド治療の時代が、ようやく到来することになると思います。 またもや、日本の研究者が体細胞を多能性細胞に作りかえるルールを書き換えたともいえます。まず、2006年に発表された山中伸弥先生のiPS細胞の技術。そして今回は、成熟細胞を一時的に酸性溶液に入れるだけで、より簡単で短時間に作製する方法の発見です。 こんなに簡単にできるのかと考えてしまうほどです。 成熟細胞から多能性細胞を作るために酸性溶液が役立つとは、誰も考えていませんでした。すばらしい発見です。しかし、この発見によって再生医療で使われている幹細胞が、iPS細胞からSTAP細胞に代わるとは限りません。同じ意味で、iPS細胞が開発された後でも1998年に発見されたES細胞を使い続ける研究者もいます。ただし、こうした知見が蓄積することで、さらなる発見を促したり、臨床までの時間を早めたりできます。例えば、ES細胞の発見から初の臨床試験までは12年かかりましたが、iPS細胞は6年でした。 そう考えるとSTAP細胞はもっと早く臨床試験にたどりつくかもしれませんが、臨床ベースで使うにはまだ多くの年月が必要だと思います」(クリス・メーソン教授 英・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン再生医療バイオプロセス学科 教授)
今回はマウスの体細胞を利用したものでしたが、ヒト細胞での作製に成功すれば、再生医療や創薬、老化やがんの研究などに役立つことでしょう。今後の研究成果に期待したいですね。 ※海外の専門家のコメントは(社)サイエンス・メディア・センターからの提供です。