「モノ言う株主」米名門百貨店の破綻招いた大誤算、長期的な目線で「企業価値の向上」を目指すべき
ロン・ジョンソンは、J.C. Pennyの伝統的な価格戦略を大きく変更しようとした。J.C. Pennyは通常の店頭価格から、セールやクーポンを利用することによって顧客が大幅なディスカウントを得ることができる仕組みを採用しており、その大幅なディスカウントが顧客の求めるJ.C. Pennyのブランドとなっていた。 ロン・ジョンソンはその仕組みを変更し、店頭価格からのディスカウントを中止した。これは、Apple社で働いていた過去の成功体験から、「ディスカウントをしなくても良いものは売れる」というポリシーを持ち込んだためである。
■株価が暴落し、ついには「経営破綻」の憂き目に しかし、J.C. Pennyで売られる商品はApple製品のようにブランド価値が高いわけではなかったため、売上は低迷し、2012年第4四半期には過去最低の売上を記録してしまう。同時に、低迷する売上から利益を守るために大規模な従業員の解雇も行なった。 ビル・アックマンとロン・ジョンソンが行なおうとした改革は、結果として裏目となり、長期的な企業価値を大きく棄損する結果となってしまった。
ビル・アックマンは失敗を認め、2013年8月に投資を引き揚げている。以下のグラフは、2010年以降のJ.C. Pennyの株価であるが、2014年には2010年の半分未満の株価になっており、いかに多くの価値が数年で失われてしまったかが理解できよう。 ■J.C. Pennyの株価の推移 ※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください なお、J.C. Pennyは2020年5月に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻した。現在は再建中であるが、店舗数は600~700ほどに縮小している。
このようにアクティビスト投資家がポジティブに働くか、ネガティブに働くかは、ケースバイケースであり、一概に答えを出すことはできない。しかし、アクティビスト投資家が、長期的な目線で企業価値の向上を目的としているかを判断するうえで、1つ基準となる考え方がある。 ■取り分を増やすのか? パイ自体を大きくするのか? それは、アクティビスト投資家が「パイから自分への分配を増やそうとしているか?」それとも「パイそれ自体を大きくしようとしているか?」である。前者を「パイ分配」とし、後者を「パイ成長」とすると、そのイメージは以下の図のようになる。