「モノ言う株主」米名門百貨店の破綻招いた大誤算、長期的な目線で「企業価値の向上」を目指すべき
また、Harvard Law Schoolが2013年8月に公表した別の調査においても、アクティビスト投資家が投資を引き揚げてからの3年間のデータを見ると、投資をされていた会社の株価は上がり続けたとし、一部の批評家が指摘するような「アクティビスト投資家は長期的な成長を犠牲に短期的な利益を追求している」という証拠は見られなかったとしている。 ■J.C. Pennyの再建では大失敗も このようなデータを基にすると、アクティビスト投資家は総合すると企業価値の向上に貢献しているようにみえるが、当然、個々の事例でみると企業価値を棄損することになったネガティブな事例も多数存在する。
アクティビスト投資家が企業価値を棄損した例として有名なのが、米投資家ビル・アックマンが創設したパーシング・スクエア・キャピタル・マネジメント(Pershing Square Capital Management)が行なった、J.C. Pennyへの投資だ。 J.C. Pennyは1902年創業の大手百貨店チェーンであり、全盛期の1970年代には店舗数2000を超える規模まで成長した。1980年代に入りウォルマートやターゲットといったより低バジェットの顧客を対象とした競合との競争が激化し、徐々にその影響力を失っていった。
そのような状況で、ビル・アックマンは2010年にJ.C. Pennyの株を全体の17%取得する決断を行なった。彼は、J.C. Pennyが持っている広く認知されたブランド力と、所有する店舗の立地の良さに目を付け、オペレーションの改善、コスト削減、ノンコア資産の売却などを通じて業績を大幅に改善できると考えたのだ。 ビル・アックマンは最初の仕事としてCEOを変更した。 新たなCEOとしてApple社でシニア・バイス・プレジデントをしていたロン・ジョンソンを指名した。彼はApple社においてAppleストアを立ち上げた人物として知られていた。