プロ野球選手の人生を背負う「スカウト」の楽しみ【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第96回
みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。プロ野球は次のペナントレースに向け、各チームが動き出しました。毎年、新人選手が入寮するニュースも微笑ましく眺めていますが、彼らはみな、ドラフトを経て入団した選手たちです。そして、彼らのプロの世界に導いたのは誰でしょう。ということで、本日は「スカウト」という仕事についてお話しさせてください。 【写真】山本キャスターの最新フォトギャラリー ドラフトを経てプロ野球の世界に足を踏み入れた選手の多くは、幼い頃から名を知られたエリートたちです。しかし、学生時代にはまったくの無名だった選手もいます。例えば、昨年のドラフトでヤクルトから育成2位で指名された髙野颯太選手は、これまでプロ野球選手を輩出したことがなかった島根県の公立高校出身。スポーツ誌の記事によれば、たまたま別の選手の視察に行ったスカウトマンの目に留まったそうです。 スカウトマンは、本当にどこへでも足を運ぶとのこと。それも、期待する選手のもとには何度でも行くそうです。大学野球が好きな知り合いは、「いつも試合を見にきている球団スカウトの顔を、いつの間にか覚えてしまう」と話していました。 以前、この連載で『ドラフトキング』という漫画を紹介させていただきました。日本中を飛び回り、足を棒のようにして"原石"を探しまわるスカウトマンのリアルな姿が、綿密な取材をもとに忠実に描かれています。 もちろん漫画ですからフィクションの部分もあるでしょうが、それにしても、スカウトマンはどんな些細な情報でも逃さないのだと感心しますし、「他の球団の知らないコネクションをいくつ持っているか」が、いい選手を獲得できるかどうかのカギになるのだと知りました。 漫画の中で印象に残ったのは、引退を決めた選手が誰よりも先に、主人公であるスカウトマンに電話で引退を報告したシーンです。主人公はその選手の全シーズンの成績を覚えていて、それを知った野球選手はとても感動します。 スカウトマンとは、その人の人生を背負うということ。野球選手の人生を変える存在ですし、自分が手がけた選手のことを常に気にかけているのでしょう。入寮の手助けはもちろん、引退後の再就職まで面倒を見ることもあるそうです。 個人的な話で恐縮ですが、私を芸能界に導いてくれたのも「偶然の縁」でした。普段は乗らないバスに間違えて乗ってしまったところ、今の事務所の方が偶然乗り合わせていて、声をかけてくださったのです。その出会いがなければ、こんなふうに野球の連載もしていなかったと思うと感慨深いものがありますね。最初に目をかけてくれたその方は今も特別な存在で、もし芸能界を引退することがあったら、きっと最初に報告するだろうと思います。まさに"芸能界の父"。きっとスカウトマンも、野球選手にとっては親のような存在なのでしょう。