プロ野球選手の人生を背負う「スカウト」の楽しみ【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第96回
スカウトマンに共通するのは、「自分のチームを強くしたい」という思い。そして、選手が最後まで幸せな野球人生を送ることを願っています。 たくさん育成選手を指名して、甲斐拓也捕手や千賀滉大投手(メッツ)などを輩出したソフトバンクのようなチームもありますが(私は「大奥システム」と呼びたいと思います)、多くの球団はそんな潤沢な資金はないので、獲得できる選手は限られます。 手薄なポジションがあるといったチーム事情や、ご縁もあります。それでも、「うちのチームが君を一番成長させることができる」という自負があるからこそ、選手に覚悟を持って声をかけるのでしょう。資金面で余裕がないチームこそ、知恵を搾っていい選手を獲得する楽しさがきっとあるはず。 ソフトバンクと240万で育成契約を交わした千賀投手も、今や年俸20億円超えのメジャーリーガーですが、無名だった千賀投手のプロへの足がかりを作ったのは、地元の一般の方でした。アマチュア野球に詳しい地元スポーツ店の店主が、球団関係者にプッシュしたことでスカウトの目に留まったというのは有名な話ですね。 広島で活躍した薮田和樹投手(オイシックス新潟アルビレックス)は、亜細亜大の同期に山﨑康晃投手(DeNA)がいたことや、怪我をしていたこともあってあまりスカウトの目に留まっていませんでした。しかし、タクシー運転手をされていたお母さんがたまたま広島の球団社長を乗せた時に、「息子は150km出すんです」とアピールしたことで、スカウトたちにリストアップされるようになったとか。 言うなれば、この世のどこかでスカウトが必ず目を光らせている、ということ。なんだか希望が持てる話ではありませんか。あるいは、あなた自身が未来のスターのスカウトマンになるかもしれません。河川敷の小学生の中に、未来のスターを見つける日が訪れる日がやって来るかも。 それではまた。 ★山本萩子(やまもと・しゅうこ)1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年から5年間、『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務めた。愛猫の名前はバレンティン 構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作