国民民主「103万円の壁」関門突破 「本丸」の税制改正に弾み、税収減懸念にも強気姿勢
国民民主党は看板政策の「103万円の壁」引き上げを政府の経済対策に明記することを自民、公明両党に飲ませ、先の衆院選で訴えた政策実現に向け一里塚を築いた。本当に実現できるかどうかという「本丸」は年末の令和7年度税制改正となる。少数与党に転落した自公は、国民民主を与党側に引き付けておく必要があり、税制改正でも国民民主が優勢を保ちそうだ。 【表でみる】控除額を178万円に引き上げた場合の年収別減税額 ■ついに壁が動いた 「ついに『壁』が動いた。皆さんの1票が30年間動かなかった壁を動かした」。国民民主の玉木雄一郎代表は20日、X(旧ツイッター)にこう書き込んだ。 3党の枠組みによる政策協議は当初、所得税の非課税枠を現行の103万円から178万円へ引き上げたいと主張する国民民主と、その際の税収減を懸念する自民との間で隔たりがあった。溝は埋まらず、協議は20日を含めて計5回に及んだ。 話し合いでは国民民主が一貫して強気の姿勢を崩さなかった。国民民主は過去にガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除を巡り、与党との協議に持ち込みながら解除には至らず少数政党の悲哀をなめた。 だが与党の衆院過半数割れで立場は一変。玉木氏は記者会見で「極めて重要な政策だ。われわれとしても譲る気はない」と突き放し、自民に圧力をかけ続けた。 膠着状態が打開されたのは19日午後。自民の小野寺五典政調会長は協議を一時中断し、国民民主の要望を受け入れる方向にかじを切った。 ■あんこなしはまんじゅうではない 再開後、小野寺氏は協議場にまんじゅうを差し入れた。「103万円の壁」の引き上げの明記がない経済対策を指して「あんこがないのはまんじゅうではない」(古川元久税調会長)と批判していた国民民主に、歩み寄るというメッセージだった。 もっとも今回の合意は経済対策への明記に過ぎず、非課税枠を現行の103万円からどれだけ引き上げられるかを実質的に決めるのは年末の7年度税制改正協議の場だ。 従来は自公の与党税調が税制改正大綱を取りまとめてきたが、今回は国民民主も含む3党協議という特殊な工程になる。国民民主は178万円まで引き上げるよう求めるものの、政府高官は「国民民主の言う通りに引き上げれば税収減で地方は大打撃だ」と牽制する。