文大統領は「三・一運動」100年演説で反植民地主義をどこまで打ち出すか
韓国の「三・一独立運動」から今年で100年となり、韓国政府は3月1日にソウルで記念式典を開きます。2回目の米朝首脳会談に注目が集まる中で、この節目の記念日に行われる文在寅(ムン・ジェイン)大統領の演説の内容に、元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏は注目します。文氏はいったい何を語るのか。美根氏の解説です。 【写真】混迷する徴用工・慰安婦問題 日韓双方の主張を整理する
今年で100年となる「三・一独立運動」記念日
1919年3月1日、日本の統治下にあった朝鮮で独立運動が発生しました。独立の目的は達成できませんでしたが、上海では「大韓民国臨時政府」が樹立されました。韓国はこの運動を大韓民国の原点だとみなしており、3月1日を「三一節」としています。 韓国の大統領は毎年この日に重要演説を行います。この記念日の性格上、演説の主たる対象は日本であり、文在寅(ムンジェイン)大統領が話すことは日韓関係に強く影響を及ぼす可能性があります。とくに、今年はこの運動が発生してから百周年に当たるので大統領の演説は例年以上注目されています。 日本と韓国の間では2018年の秋、慰安婦問題、徴用工問題、竹島への韓国国会議員の上陸、韓国の観艦式に参加する日本の艦船に自衛艦旗の旭日旗を掲揚しないようにと韓国側が要請し、日本側が参加を中止したこと、海上自衛隊の哨戒機に対し韓国の艦船がレーダーを照射したことなど、一連の問題が立て続けに起こりました。 さらに昨年11月には韓国政府が慰安婦問題に関する日韓両政府の合意に従い設置した「和解・癒やし財団」を、法的には韓国の財団とはいえ、一方的に解散する方針を決定しました。今年に入ると、韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長は、米ブルームバーグ通信とのインタビューで、慰安婦問題について天皇の謝罪を求める発言をし、日本側に強い不快感を与えました。
一連の問題の背景にある韓国の反植民地主義
これらの問題は、すべて日本による植民地統治から発生しています。レーダー照射事件だけは一見そうは見えないかもしれませんが、旭日旗拒否の延長線上で起こったことであり、やはり反植民地主義が背景になっています。李洛淵(イ・ナギョン)首相は旭日旗拒否の理由について、「植民地支配の痛みを記憶している韓国人の心に、旭日旗がどんな影響を与えるか、日本も少し考慮する必要があると思う」と、韓国側の認識を明確に示しています。 一方、日本側では植民地支配は70年以上も前に終わったことであるという認識が強く、そのため日韓関係を改善するのに植民地支配の影響を考えることはしない傾向があります。 また、日本では、旭日旗に類似の旗は自衛隊に限らず広く使われており、それを掲揚することについていちいち小言を言われたくないという気持ちもあります。 ともかく、植民地支配についての日韓両国の認識がいまだにかけ離れていることは残念です。もちろん、日本側としても、植民地支配が韓国人を苦しめたこと、日本は加害者であったことを忘れてはなりません。この点を軽視すると国際世論を敵に回すことになるでしょう。 しかし、これら一連の問題は、国際法と、1965年の日韓基本条約と請求権協定に従って解決すべきだという日本側の主張は強力であり、韓国側は有効な反論ができないでいます。 また、日本側は、請求権協定が明記している紛争解決のために協議に応じるよう韓国側に求めていますが、韓国側からは回答が得られていません。