国産農産物はブランド価値に 持続可能な農業を後押し ロイヤルHDの藤田敦子取締役
ロイヤルホールディングス(HD)は、「ロイヤルホスト」や「てんや」など国産食材を応援する「Good JAPAN」企画をグループ横断的に展開する。持続可能な農業の実現を通じて、企業のブランド価値向上を目指す。農業界と外食業界の連携にどのような可能性があるのか。ロイヤルHDの藤田敦子取締役に聞いた。 【図で見る】 ロイヤルHDの事業概要 ──「サステナビリティ経営」について教えてください。 国産の農産物を安定して調達することがロイヤルHDのブランド価値の向上につながる。地域の特色ある農産物に注目し、栽培面積の拡大や品種を指定した相対取引など持続可能な農業経営を後押しする。 利益だけを追い求めるのではなく、環境性、社会性、経済性の三つの価値をどう共存させるかが重要だ。農作物の恩恵を受けて経済活動が続けられていることを、理解する必要がある。 適切な調達量をベースに環境配慮につなげる。工場で製造時に出た端材を活用し新たな商品として開発し販売する「Mottainaiプロジェクト」を始めた。調達した食材を食品ロスで廃棄することがないように、「もったいないをおいしいに」をテーマに新商品開発に注力する。 ──国産食材の使用を重要視しています。 メニューに国産食材を取り入れる「Good JAPAN」企画は、日本のおいしい食材を生産者とチームになって紹介する取り組み。農家や地域の応援や、国産食材の消費の活性化を目的にスタートした。実際に生産地に出向き、どういう思いが込められた農産物なのか、収穫作業などを通して「源流を知る」活動を続ける。生産者の食材に懸ける思いや価値を、商品を通して消費者に伝えることは国産農産物を使用する企業の役割である。 国産を使用する上で、品種にこだわり商品の付加価値を上げることで、価格転嫁にもつながっている。サラダの原料に旧来の硬めのケールでなく、日本人の口に合う品種を採用した。消費者から支持を受け、取引農家が増えるなど国内で栽培拡大の動きが出ている。 ――外食業界と農業界の連携の可能性について、どう考えますか。 農業界は耕作放棄地の増加や高齢化による離農など、直面する課題が多い。ロイヤルHDが国産農産物を使用することは、農業界の抱える課題に向き合い持続可能な農業を実現するための策と考えている。野菜の品種にこだわったり、栽培面積拡大を通じて供給量を増やしたりと、連携を通じてフードバリューチェーンの強化が見込める。 量販店に卸す野菜は見栄えの良さなど棚持ちを優先して収穫をすることが多いが、外食業界はより味を重視したタイミングで収穫した農産物を求めている。収穫するタイミングが朝なのか夜なのかで味は変わる。農家と相対取引をする上でも、一番おいしい時間に合わせて収穫することを重要と考えており、野菜の価値をさらに高める取り組みを進めたい。 ――日本の農業への期待を教えてください。 日本の農業の大きな問題の一つとして、気候変動により農産物の端境期が長くなってきていることがある。国産農産物の供給が不足すると、輸入品で賄う必要性も出てきてしまう。メニューに掲載すると安定して消費者に提供することが義務となり、輸入品を使うことで味が変わってしまうことも懸念される。一定の物量を確実に供給してもらうために、企業としても対応が求められている。 資材高騰で経営が圧迫されている農家は多い。しかし、実際に農家と言葉を交わすことで、課題と向き合いながら将来を見据え頑張っていることが伝わってくる。国産農産物を使用する企業として、農家の抱える課題を解決することで強固なフードバリューチェーンを築き、持続可能な農業の実現に貢献したい。 ふじた・あつこ 福岡県出身。1989年にロイヤル(現ロイヤルHD)に入社。直営店のスタッフや人事部長を経て、2023年に食品事業担当の執行役員に就任。(聞き手・廣田泉)
日本農業新聞