元移植コーディネーター「職場で週3日寝泊まりも」…深刻なあっせん機関の人員不足
[移植逼迫]<中>
「週3日、職場で寝泊まりすることもあった。やりがいはあったけれど……」
5月下旬、臓器あっせん機関「日本臓器移植ネットワーク(JOT)」で移植コーディネーターを務めていた男性は、多忙を極めた毎日をそう振り返った。
コーディネーターは、脳死下の臓器提供者(ドナー)の候補患者がいる病院に駆けつけ、家族に臓器提供の説明や意思確認を行う。JOT本部で臓器ごとに移植施設を決める役割も担う。
ひとたびあっせん業務が始まると3~7日程度、夜間や休日を問わず対応にあたる。男性は「コーディネーターが新たに採用されても、激務でやめる人も同じくらいいる」と内情を明かす。男性も職場を去った。
2023年、国内で行われた脳死下の臓器提供は過去最多の132件だった。提供増に伴い、コーディネーターの業務は逼迫(ひっぱく)している。
JOTは厚生労働相からあっせん業の許可を得た公益社団法人で、国の補助金を受ける。今年1月末現在、コーディネーターは34人。21年6月、JOTが厚労省の臓器移植委員会に示した試算では、年間125件の臓器提供に対応するためには54人、200件ならば72人が必要だとしており、明らかに不足している。
横田裕行・JOT理事長は「1件あたり4、5人のコーディネーターを医療機関に派遣してきたが、同時に複数の提供事例が発生すると、これまで通りの派遣態勢を組むのが難しくなる」と述べ、人材確保の必要性などを示した。
韓国では23年、483件の提供があり、臓器あっせん機関「韓国臓器組織寄贈院(KODA)」のコーディネーターが対応した。臓器提供施設では、家族の意思確認や、脳死判定から臓器摘出までの手続きを一手に引き受け、主体的に進めることができる。
現在、KODAのコーディネーターは58人。李三悦(イサムヨル)・KODA院長は「業務量は多いが、一人ひとりが誇りを持って働ける環境を整えている」とする。あっせん業務が終わる度に1日ほど休ませるほか、心理の専門家によるカウンセリングの機会も設ける。