「SNS型詐欺注意」踊る署員の動画、公開1週間で再生1000万回超…「こんなにバズるとは」
インターネットのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で交流し、相手を信用させて金をだまし取る「SNS型詐欺」防止のため、広島県警安佐南署が作成した啓発動画が注目を集めている。保育園児が歌う「オクラホマミキサー」の替え歌に合わせ、署員が踊る様子がネット上で「シュール」などと評され、X(旧ツイッター)などでの再生回数は7日の公開から約1週間で1000万回を突破した。同署は「真剣に作ったつもりだが、こんなに『バズる』(話題になる)とは」と驚いている。 【円グラフ】県内のSNS型詐欺被害者の年代別割合
インスタ、ラインで言い寄って 心を惑わすアイラブユー 可愛い 素敵よ 愛してる 会いたい 結婚 金送れ――。
タイトルは「詐欺のうた」。SNSを通じ、恋愛感情を抱かせて金をだましとるロマンス詐欺と、虚偽の投資話を持ちかける投資詐欺の手口を伝え、注意を呼び掛ける。保育園児20人が元気よく歌い、署員5人が淡々と踊り続ける1分15秒の動画で、署員が突然、虹色に光ったり、分身したりと、脈絡のない編集も人気の一つだ。
同署生活安全課の巡査部長(42)が多くの人に注意喚起したいと発案した。歌詞や振り付けは自ら考え、独学で編集作業にも取り組み、約2か月かけて完成させた。「ピンぼけの映像をごまかそうと合成を繰り返しているうちに、今の映像になった」と苦笑する。
「子どもの声だと、高齢者にも響くはず」と、地域活動などで交流のあった梅林よつば保育園(広島市安佐南区)に歌を依頼。年長組の園児らは「ユーチューブに出られる」と大喜びで、あっという間に歌詞を覚えたという。
園児(5)は「『言葉巧みに持ち掛けて』という歌詞が難しくて、何回も練習した。みんなに聞いてほしい」と笑顔。主任保育士の女性(46)も「歌の内容はほとんど理解していないと思うが、みんな楽しそうに歌っていた。子どもたちの力が世の中の役に立ってうれしい」と話した。
県内でも増加傾向、40~60代に被害集中
県警によると、県内でのSNS型詐欺は増加傾向にある。被害件数は統計を取り始めた2023年に128件だったが、24年は9月末時点で、すでに268件に上る。被害者の年代は、50歳代が27%で最も多く、40歳代と60歳代がともに22%となっている。被害総額も23年の約9億3800万円から、24年は9月末時点で約30億1570万円と3倍以上に増えており、県警は「連絡先がSNSのみのやり取りで、お金を要求された場合は、まず詐欺を疑ってほしい」と注意を呼びかけている。