「遅すぎた」喜田拓也&渡辺皓太Wボランチ起用と「狙われた」最終ラインの裏【横浜FM準優勝「勝負の分かれ目」とACL「今後の戦い方」】(2)
■「裏返された」横浜FMのプレッシング
これに対して横浜FMは、相手ボールに対して高い位置からプレスをかけて奪いにいこうとした。 横浜FMは、第1戦のイメージのまま戦っていたのだろう。 第1戦ではアル・アインは引き気味に戦っており、そこから前線にロングボールを蹴り込んでくるのだが、ロングボールの精度が低かったので、横浜FMにとって大きな脅威とはならなかった。そこで、横浜FMとしては高い位置からプレスをかけることによって、相手のロングボールの出しどころを制限しようとしたのだろう。 しかし、アル・アインは、横浜FMの選手がボールを奪いにアタックしてくるのを利用して、それよりワンテンポ早くワンタッチで裏を狙ってきた。こうして、横浜FMのプレッシングは見事に裏返されてしまったのだ。 1点リードのアドバンテージを持っていた横浜FMとしては、立ち上がりにはもう少し相手の様子を見てもよかったのではないだろうか。無理にボールを奪いに行ってひっくり返されてしまうくらいなら、戦い方を切り替えてスペースを埋めて、構えて守って相手の動きが落ちるのを待ってもよかったのではないか。
■流れを引き寄せた「ダブルボランチ」変更
横浜FMの守り方を逆手にとって裏を取ることに成功したアル・アインは、前半の9分に素早いパスをつないで先制ゴールを奪い、精神的にも優位に立った。クリアボールがハーフライン付近にいたヤヒア・ナデルに渡ると、ナデルはそのボールをすぐにトップのラヒミに預け、そのままトップスピードでペナルティーエリア深くまで侵入。ナデルはラヒミからのパスをヒールでラヒミに戻し、ラヒミが横浜FMゴールに突き刺した。 その後、横浜FMはアル・アインの猛攻を受け続けたが、なんとかゴール前を固めて、さらなる失点を防ぐと、20分過ぎにはMFの並びを変えて守備を安定させることにも成功した。 スタートは喜田拓也をアンカーにして渡辺皓太と植中朝日をインサイドハーフに置く「逆三角形」だったが、渡辺のポジションを下げて喜田と2人で中盤の底のスペースを埋めたのだ(昨年まで、横浜FMはボランチ2人の形で戦っており、今シーズン就任したキューウェル監督がより攻撃的な「逆三角形」の形を取り入れた)。 横浜FMが中盤の並びを変えてからはボールを持つ時間も長くなり、26分に右から攻撃参加した松原健のクロスを渡辺がシュートして初めての決定機を作ると、28分にも左のエウベルからのクロスを喜田がシュート。横浜FMが、次第に流れを引き寄せ始めていたのだ(そこで、あのVARによるPKが生まれた)。 もちろん、これは結果論ではあるが、せっかく「1点リード」で臨むことができたのだから、第2戦は最初からこの守備的な並びでスタートすべきだったのではないかという気もする。少なくとも、まずは様子を見るべきだったろう。
後藤健生
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