F1用のBBSワンメイクホイール。2023年夏からアップデート版”MK2”を投入済み……今季から全量置き換え完了「側面衝撃耐性と塗膜特性が向上」
F1のオフィシャルホイールサプライヤーを務めるBBSが、2023年シーズン中盤からMK2と呼ばれるアップデート版のホイールの投入を開始した。2024年シーズンは、使われる全てのホイールがこのMK2になる。 【ギャラリー】美しく個性的なマシン”粒ぞろい”だった1992年のF1:ちなみにフェラーリF92AのホイールはBBS製 BBSはF1に現行のテクニカルレギュレーションが導入され、ホイール径が18インチとなった2022年からオフィシャルホイールサプライヤーに就任。全車両がBBS製ホイールを装着している。 しかし2023年シーズン途中から、FIAのフィードバックを基に改良したホイール”MK2”の投入を開始し、2024年シーズンからは全てのホイールがこのMK2に交換される。 「2023年に、段階的にMK2への置き換えが徐々に行なわれました。つまり、MK1とMK2が並行して使われていたということになります」 BBSはmotorsport.comの取材にそう回答を寄せた。曰くこのMK2ホイールは、耐久性と塗膜特性が向上したものであるという。 「スポークの形状に変更はありません。見た目は同じです。当初の設計でも、耐久性には問題がありませんでした。ただ、側面の衝撃に対応するため、アウターリムの形状を強化しました」 「塗膜特性も向上しました。これは、BBSモータースポーツに完成した自社工場によるところが大きいです。MK1とMK2は同じ塗装技術を用いていますが、MK2は最新の設備で塗装されました。新しい設備を導入することで、品質の効率を向上させることができたのです」 BBSジャパンは親会社である前田工繊の投資により、BBSモータースポーツの新工場をドイツに開設。これにより塗装を、BBSモータースポーツで直接行なうようになった。これが塗装の品質を向上させるきっかけになったという。 なお形状の変更により、重量自体はわずかに増えたものの、側面からの衝撃に対する耐性は2倍以上になった。 「18インチのホイールは、13インチのホイールと比べて、外周部からの側面衝撃が大きくなりました。側面からの衝撃を頻繁に受けるようになり、それに伴ってタイヤが緩んでしまうことがありました。そのためBBSモータースポーツの開発部は、FIAの要請に応える形でMK2の開発を開始したのです」 このMK2ホイールは、昨シーズンの夏頃から実戦投入が開始され、段階的にその他のMK1ホイールを置き換えていったという。 「2023年はシーズン中にMK1とMK2を並行して使用し、MK2に段階的に切り替えていきました。チームごとの支給数などの詳細は明らかにできませんが、2023年の夏頃から段階的に切り替えていきました」 「現時点で、苦情や反対意見は寄せられていません。それが最も良かったことだと思います。ワンメイクということを考慮すれば、それは全てのチームにとって特別なことだと思います」 「我々は全てのチームに予定通りホイールを供給し、満足していただけるように心がけています。ホイールを改造する予定は、もうありません。計画は順調に進んでおり、時間通りに納品できるように注力したいと考えています」 なおBBSのF1用ホイールは日本で鍛造された後、ドイツにあるBBSモータースポーツに送られ、最終的な機械加工と塗装を行なってF1チームに納品される。日本の製造拠点は富山県の高岡市にあるため、2024年1月1日に発生した能登半島地震の被害も懸念される。実際、当時はかなりの揺れだったという。 ただ高岡のBBS工場は当初のカレンダー通り正常稼働しており、製造への影響はなし。またF1用MK2ホイールの製造は、昨年春の段階で既に完了しており、現在はドイツの工場で最終調整と塗装を行なっているという。
田中健一