例えば“猛暑日”は要注意…「メディアの報道」からわかる事件発生フラグ【心理学者が解説】
「自殺報道が出ると自殺者が増える」は事実
テレビや新聞で自殺者の報道が出ると、そのあと模倣による自殺者が増えます。特に有名人が自殺したあと、自殺が相次ぐのです。これを心理学では「ウェルテル効果」と呼んでいます。 ドイツの文豪ゲーテが小説『若きウェルテルの悩み』を発表すると、作品の中で自殺した主人公を模倣して若者たちが相次いで自殺したという事件に由来する言葉です。 本当にそんなことがあるのかな、と思うかもしれませんが、ウェルテル効果については数多くの研究がそれを事実であることを示しています。 米国ウェイン州立大学のスティーブン・スタックは、自殺報道がその後の自殺を含む模倣犯罪を引き起こすかどうかを調べた42の研究を総合的に分析してみました。その結果、有名人や政治家の自殺があると、その数日後までの模倣自殺は14.3倍も増えることがわかりました。 日本でもタレントの自殺報道がなされると、そのあと自殺者は増えます。模倣自殺や、後追い自殺と呼ばれています。 そのためでしょうか、厚生労働大臣指定法人の「いのち支える自殺対策推進センター」では、有名人の自殺報道に対して注意喚起を行っています。 有名なタレントが自殺をすると、マスコミはこぞって報道します。タレントの自殺報道は、一般大衆の関心も高いからです。けれども、マスコミが大きく報道すればするほど、模倣自殺が増えることを考えると、できるだけ小さな扱いにするほうが、本当は望ましいのです。自殺報道さえなければ、そのあとの自殺者を思いとどまらせることができるでしょうから。 報道するにしても、テレビの視聴者や新聞の読者に向けて、悩みや相談を受けつけてくれる窓口なども合わせて報道してもらわなければ困ります。
自殺に限らず、事件報道が出たら「その模倣事件」を警戒すべき
模倣されるのは自殺だけではありません。 マスコミの影響力はとても強いので、強盗事件が報道されたあとには、模倣の強盗事件も増えるのです。ですので、強盗事件がニュースで流れたら、しばらくの間は強盗に巻き込まれないように、行動に気をつけなければなりません。 飛行機のハイジャック事件が報道されたら、やはりウェルテル効果で模倣のハイジャック事件が増えるでしょうから、飛行機に乗るときにも気をつける必要があります。 マスコミの報道を見るときには、そのあとには模倣犯罪や事件も増えることを予測しましょう。おかしな事件に巻き込まれるのは怖いですからね。 内藤 誼人 心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表 慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる! 暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。
内藤 誼人