大分県の宇佐神宮創建1300年、国宝の本殿や壮麗な勅使門がある上宮の改修ほぼ終了…「美しい姿を見て」
現在は勅祭に合わせて公開され、一般の人も渡ることができる。勅祭は今年秋に営まれる予定で、権禰宜の山本宗龍さん(33)は「檜皮葺きの屋根や湾曲した建築美などに注目してほしい」と話す。
神輿や神仏習合の概念生み出す
八幡神(応神天皇)、比売大神、神功皇后をまつる宇佐市の宇佐神宮は571年、八幡神が童子姿で現れたことが始まりとされる。725年に御殿が現在地に鎮座してから、今年で1300年を数える。
神宮などによると、神輿や放生会、神仏習合の概念を生み出した。神輿は朝廷の隼人平定で八幡神が出陣した際や、奈良の大仏の開眼法要に向かった際に乗ったとされる輿が起源。放生会は殺生を悔いた八幡神が仏教に救いを求めて始まったという。
県内最大の穀倉地帯・宇佐平野がある宇佐市では、新羅や百済様式の瓦が見つかっている。学芸員の資格をもつ市観光・ブランド課の弘中正芳さん(38)(歴史学)は「宇佐では古くから、少なくない渡来人がいた。日本古来の信仰と仏教が融合したのが八幡神や神仏習合ではないか」と話す。
769年には、称徳天皇の寵臣・道鏡に皇位につくよう神託が下ったとの奏上を、忠臣の和気清麻呂がうそと見破った「宇佐八幡宮神託事件」が起きた。
八幡信仰は源氏の崇敬を受け、石清水八幡宮(京都府)、鶴岡八幡宮(神奈川県)など全国に広がっていった。戦時中は武運長久を願い、宇佐海軍航空隊の特攻隊員らも参詣した。
戦後は、年間100万人超が訪れる観光地に。今年は神宮などが舞台のアニメ「こめかみっ!ガールズ」も放送予定だ。弘中さんは「様々な人に足を運んでもらえるよう、イベントなどを考えたい」と意気込む。
神宮のそばで育った。境内の小椋山ではシイの実採り、菱形池や初沢池では魚釣り。「神宮は一日中いても飽きない遊び場だった」
県内の郵便局に勤め始めてからは足が遠のいたが、退職を機に「足元の歴史を学び直そう」と図書館に通い、ゆかりの地を巡った。歴史を知るにつけ、「参拝客にも知ってもらいたい」との思いが強くなり、10年ほど前にガイドを始めた。