高橋大輔「シングル引退で一度は離れたアイススケート。32歳で現役復帰、アイスダンス転向。競技生活は引退しても氷上でのパフォーマンスは生涯現役で」
◆フィギュアにはまだまだ可能性がある これから先のことについて、あえて決めないようにしています。「挑戦し続ける人」みたいに言ってくださる方もいますが、全然ストイックじゃないですよ。飽きっぽいところがあるし、同じことの繰り返しは苦手。何もしなくていいなら、ずっとボーッとしているタイプ(笑)。 だから、いろんな仕事のオファーをいただくのは、本当にありがたいです。今は、知らないことはなんでもやってみたい。自分自身がどう変わるのかを知るために。 フィギュアスケートの未来のために僕にできることは何なのか。フィギュアにはまだまだ可能性があると思います。一方で、アイスショーの人気を維持するのは難しい。氷の維持費もかかるので、チケット代はどうしても高くなるし、ミュージカルなどほかのエンターテインメントというライバルも。 『滑走屋』では、僕が国内の試合を見に行って、疾走感のある力強い滑りができるスケーターを選びました。今の競技のルールでは、ジャンプが苦手だと国際大会で成績が残せず、アイスショーの声もなかなか掛からない。でも、いいものを持っている選手はたくさんいます。 そんな選手がスケートで生きていけるような「カンパニー」を作りたい。目標というより夢みたいな話ですけど、叶ったら最高だな。簡単な道のりじゃないことはわかっていますが。 パフォーマーとして「生涯現役」と口にしていますが、スケーターとしてのタイムリミットがあることはわかっています。だからこそ、バリバリのテクニックを見せるのではなく、滑りと表現力でお客様に「魅せる」。そんな方向性を探っていきたい。 とりあえず、5つ年上の荒川静香さんが滑っていらっしゃる限り、僕も滑り続け、スケートの未来のためにできることをしていくつもりです。そして、そんな毎日を「わー、大変だ」なんて言いながら、楽しんでいけたらいいですね。 (構成=平林理恵、撮影=宅間國博)
高橋大輔