ファッション界の椅子取りゲームが過熱。デザイナーに求められる素養とは
「ヴァレンティノ」、「グッチ」、「アレキサンダー・マックイーン」など、トップメゾンでクリエイティブ ディレクターの交代劇が頻発。その背景を、フロントロウの常連であるファッションジャーナリスト、スージー・ロウが分析。UK版『ELLE』より。 【写真】華麗セレブが来場! 2024-25秋冬パリコレのフロントロウを総覧
ピエールパオロ・ピッチョーリが数週間前にパリで「ヴァレンティノ」の美しいオールブラックの2024年秋冬コレクションを発表したとき、これがローマのファッションハウスでの彼の最後のコレクションになるとは、だれもが予想していなかっただろう。私たちは、「バービーコア」以前に登場したビビットなピンク一色の2022年秋冬コレクションと同様に、モノクロームのランウェイでの主張だと考えていた。今にして思えば、それは葬送の別れの言葉のようであり、これまでピッチョーリが衣装と多彩なキャスティングの両方で色を称賛してきたことを考えると、いっそう痛ましい気持ちになる。
ピッチョーリが25年間在籍した「ヴァレンティノ」を離れることが発表された3月22日(現地時間)、このメゾンに消えることのない一章を書き残した彼は、心のこもったメッセージの中で去り際の感情を伝えた。 「すべての物語に始まり、あるいは終わりがあるわけではありません。物語の中には影を生み出さないほど明るく輝く、ある種の永遠の現在を生きるものもあります」
衝撃的なニュースにSNSで数多くの賛辞の声が寄せられる中、人々の注目は今、ここ数年で加速するファッション業界におけるクリエイティブ ディレクターの流動性に向けられている。ピッチョーリの退任から一週間も待たず、「ヴァレンティノ」は3月28日(現地時間)、4月2日付でアレッサンドロ・ミケーレをクリエイティブ ディレクターに任命することを発表。一方、売上高の減少を抱える「グッチ」は新デザイナーのサバト・デ・サルノ(「ヴァレンティノ」のピッチョーリの元で10年以上働いていた)に期待をかける。