じつは「南海トラフ巨大地震」では「東京」も大きな被害…その具体的な想定の数値
日本の生命線に大きな被害が
その第二次報告によれば、最大クラスモデルの南海トラフ巨大地震が発生すると、震度6弱以上の地域は、九州から関東にかけての広い地域に及ぶ。東日本大震災時に震度7が観測されたのは宮城県栗原市の1市だけだったが、最大級の南海トラフ巨大地震が発生すれば、震度7の想定地域は10県151市町村、震度6強想定地域は21県239市町村、震度6弱想定地域は21府県293市町村に上る。震度面積を東日本大震災と比較すると、南海トラフ巨大地震の方が震度7の面積で約96倍、震度6強で約11倍、震度6弱で約4倍になると想定される。つまり、東日本大震災よりも、南海トラフ巨大地震の方が圧倒的に強い揺れに見舞われる地域が多いということである。 津波高の平均値では、津波高が5m以上と想定される地域は124市町村、津波高が10m以上と想定される地域が21市町村。想定震源断層域が近い地域では、短時間で津波が襲ってくると想定されている。最短到達時間で最も早いところでは、高さ1mの津波が地震発生2~3分後に襲う地域や、最大津波高が30mを超える想定地域もある。ただ、これはあくまで最悪の想定(シミュレーション)であって、必ずこの通りに来るとは限らない。しかし、想定数値が出た以上、詳細を吟味し最悪に備えた対策が必要となる。最悪の場合の被害想定は、死者32万3000人、建物の全壊焼失約238万6000棟。経済被害は、日本の国家予算の約2倍の220兆3000億円と想定。 甚大被害の想定地域は、日本の産業を支える太平洋ベルト地帯。そこは日本一の生産・流通・金融等、産業・経済活動の中枢であり、文字通り日本の生命線。そこで生産停止、物流混乱など、産業と経済活動が長期停滞すれば、たちまち各産業の物資不足を招く。その衝撃と波紋は、網の目のようなサプライチェーンを伝い、国内から海外へと一気に拡散。未曾有のジャパンショックが、世界経済に深刻なダメージを与え、その影響が長期に及ぶ可能性がある。そうした日本発の世界的経済パニックを防ぐためには、被災想定地域の個人・企業・自治体・国家が連携し、それぞれの立場で実践的な事前の防災・減災対策が極めて重要になる。 そのカギを握るのが東京、名古屋、大阪。もし、その三大都市圏を最大級の南海トラフ巨大地震が直撃した時、どれほどの大揺れ、大津波、長周期地震動、液状化に見舞われ、どんな被害が出るのか、その対策はどうすべきか、モデル検討会が推計した三大都市圏における超巨大地震の全容を紹介し解説する。