じつは「南海トラフ巨大地震」では「東京」も大きな被害…その具体的な想定の数値
南海トラフ巨大地震の最大級モデル
日本の防災は中央防災会議から始まる。会長は内閣総理大臣、そして全閣僚と指定公共機関(日本銀行、日本赤十字社、NHK、NTT)の代表者及び学識経験者を委員として構成され、災害対策基本法に基づき防災の重要政策を審議する国家機関が中央防災会議。その傘下に内閣府の大臣政務官を会長とする幹事会と、中央防災会議の議決によって設置される専門調査会がある。その調査会の一つが「南海トラフの巨大地震モデル検討会(座長:阿部勝征東京大学名誉教授「以下、モデル検討会」) 【マンガ】「南海トラフ巨大地震」が起きたら…そのとき目にする「ヤバすぎる惨状」 モデル検討会は2011年12月27日、南海トラフ巨大地震モデルの「中間とりまとめ」を発表。その中で地震モデルを検討するにあたりGPS(全地球測位システム)データ等で解析された、プレートの平均年間運動速度などを考慮するとしている(1-1図参照)。 図をみると、駿河湾付近では1年間に2.4cm、潮岬付近で年間4.8cm、高知県付近で年間5.6cm、日向灘付近では年間6.7cmの速度でフィリピン海プレートが毎年ユーラシアプレートの下に沈み込んでいる。直近の「東海地震領域」の地震は1854年の安政東海地震。「東南海地震領域」の地震は1944年昭和東南海地震、「南海地震領域」の地震は1946年昭和南海地震、各領域は地震発生時に蓄積されていたひずみを解消してから、すでに80~169年が経過している。その間、前述の速度で休むことなく、またひずみが蓄積され、日を追うごとに、南海トラフ巨大地震発生のリスクが高まっているといわれる。 南海トラフ巨大地震の向こう30年以内の発生確率は70~80%だが、そのXデーがいつなのかは、現在の科学でも正確な時期(年月)予測はできない。しかし、ひずみに耐えているプレート間では、Xデーのカウントダウンを始めていると考えるのが自然である。では、その超巨大地震が起きた場合、どこに、どんな揺れ、どんな高さの津波、どれほどの長周期地震動が襲うのか? モデル検討会は12年8月29日、南海トラフ巨大地震の最大クラスモデルによる「津波断層モデルと津波高・浸水水域等について」と「強震断層モデルと震度分布について」を公表(第二次報告)。一次報告では震度分布と津波高等を50mメッシュで推計していたが、二次報告では10mメッシュの地形データ等を用いて計算条件を精緻化し、海岸線における津波高などを推計している。