テスラ「Model Q」は本当に発売されるのか? その可能性を検証してみた
「プロジェクト・レッドウッド」は延期されたのでは?
テスラが2025年上半期に新型エントリーモデル「Model Q」を発売する可能性が取りざたされている。発端は、ドイツ最大のメガバンク、ドイツ銀行が自動車株の投資家限定で発行した業界動向のレポート。テスラのラインナップでもっとも手ごろな価格で販売され、米国では補助金込みで2万5000ドル~、補助金が停止されても3万ドル程度になると報告されている。つまりかねてより噂になっていた、いわゆる「Model2」の発売が間近に迫っているというわけだが、その真偽はいかばかりであろうか。 【写真】テスラのロボタクシーとロボバン、モデル3、モデルYなど ドイツ銀行のレポートは、テスラのIR部門の責任者トラビス・アクセルロッド氏と面談した際の発言として紹介されていたようだ。同氏は「2025年前半に3万ドル未満の発売予定であり、この新モデルの追加で来年の生産台数は20~30%増加する」と述べたという。 ちなみにモデルQという呼称はドイツ銀行のレポート内で用いられているもので、アクセルロッド氏は「3万ドル未満のクルマ」と述べているだけだ。とはいえ、これが長年噂になってきた、いわゆるモデル2のことを指している可能性はある。 このもっともお手頃なテスラは、「レッドウッド」と名付けられたプロジェクトで開発が進められており、2025年後半の発売を目指していることが2024年1月の2023年第4四半期決算発表会で明らかにされている。ところが、その直後の4月に同プロジェクトが2027年以降に延期されたことが一部メディアによって報じられ、テスラファンや投資家を落胆させたのはまだ記憶に新しい。 ゆえに、「テスラは普及価格帯のEV発売に興味を失い、これからは自動運転・ロボタクシー事業に全力投球する」という見方が急速に広がっていった。
一部スペックに関する具体的な情報も流れている。ということは・・・?
そこに降って沸いたのが「モデルQ」の情報だ。折しも日本では、日産とホンダの経営統合問題を巡ってモデルQのことはさほど大きなニュースにはなっていないようだが、とくに米国・中国では、大変な関心が寄せられているようだ。もちろん、いつものようにテスラからは一切のコメントはないので、現時点で、真相は一切不明であることは重ねてお断りしておく。 では、話題のモデルQとはどんなクルマなのだろう。さまざまなメディアに登場している情報を整理すると、概ねこんな感じである。 ・全長は4m未満(3988mm?)、モデル3よりも約15%短く、重量は30%低減されている。 ・プラットフォームは現行モデル3/モデルYの短縮版。※いわゆるアンボックストプロセスではない。 ・既存車種の転用なので上記2車種との混流生産が可能。その結果、生産コストはモデル3のおよそ半分まで圧縮される。 ・駆動方式は1モーターRWDと2モーターAWD。 ・バッテリーはLFP(リン酸鉄リチウムイオン)。容量は53kWhと75kWhの2種類。 ・航続距離はRWDモデルで500km前後。 ・米国内での目標価格は補助金込みで2万5000ドル、補助金が停止されても3万7500ドル以下に。 ・生産は2025年央にギガファクトリー上海で始まり、追って米国本土の工場でも生産開始。 ほかにもディテールに関して漏れ伝わっているが、概ねこんな感じだ。つまり低価格実現の秘策は、既存モデル(モデル3/モデルY)の流用・転用であり、既存の製造ラインで対応できる点にある。テスラのイーロン・マスクCEOは、「新しいプラットフォームを開発する代わりに、そして膨大なバグテストや費用、時間をかける代わりに、既存の製品をベースに開発することでコストを削減できる」と繰り返し示唆してきた。その点では、今回の情報にはある種の説得力はある。