なぜ南アはウェールズとの接戦制し決勝進出を決めたのか?
デュトイとフランカーでコンビを組むシヤ・コリシは、同国代表史上初の黒人主将。このハードワークの根っこには、コーチングと心の安定があると説明した。 「全力を尽くすなか、ミスもするかもしれません。でも、我々のコーチ陣はそのミスが起こることも踏まえて指導をしてくれる。きょうはプレッシャーをうまく扱えたのが嬉しかった」 交代策も光った。2018年就任のラシー・エラスムス監督は、今大会の決勝トーナメントの初戦となる日本代表戦からフォワードの控えメンバーを一般的な5名から6名に増やした。スターターが序盤からトップパワーで全力を出し切り、試合中盤からフレッシュなメンバーがエネルギーを注入する作戦。日本も、その戦略に屈した。 この日も9―9の同点だった後半8分に膠着状態を打破しようと、最前列の3名を一挙に交代した。フッカーのマルコム・マークスを筆頭に、ベンチのフロントロー勢は運動量や突進力に定評があるメンバーだ。2列目のロックも順番にチェンジ。続く13分にはエベン・エツベスに代わってスピードのあるRGスナイマンが入り、16―9と勝ち越した18分にはルード・デヤハーを地道に働くフランコ・モスタートへスイッチした。 リザーブ勢は気を吐いた。試合後の公式スタッツによれば、途中から左右のプロップに入ったスティーブン・キッツォフ、ヴィンセント・コッホのタックル数は、いずれも両軍通算3位タイの9本。マークスも懸命に身体を張った。 以後はスナイマンがモール(立ったまま塊となって前へボールを運ぶプレー)の核となり、モスタートがロングキックを追いかけるチェイサーとして攻防を引き締めた。 先発ナンバーエイトのドウェイン・フェルミューレンは「試合はスターターの15人だけでなく、23人全員でするもの。私たちはリザーブの選手を爆弾のようだと捉えている。爆弾のような選手がインパクトを示してくれた」と、その戦略の効果を口にした。 指揮官のエラスムスは、集団としてのまとまりを強調した。 「私たちのいいところは、(メンバー外を含めた)31人のスコッドからその週にプレーする23人を選んでいるところ。私たちはうまくいっている」 最後に切られたカードは、フォワード第3列のフランソワ・ロウだった。 フルバックのフランス・ステインとともに後半の29分に投入され、同32分、自陣中盤左での相手ボールのラインアウトに対峙した。