なぜ南アはウェールズとの接戦制し決勝進出を決めたのか?
勝ち越しを目指すウェールズ代表は、モールを押してからのフェーズアタックに活路を見出だそうとするが、緑の壁はなかなか崩れない。33分。デュトイがタックルを決めたランナーの手元へ、ロウが渾身のジャッカル。ウェールズ代表のノット・リリース・ザ・ボール(倒れたランナーが球を手放さない反則)を誘い、ピンチを脱したのだった。 南アフリカ代表はペナルティーキックで敵陣へ進み、モールを組んでまたもウェールズ代表の反則を引き出す。ここでポラードが、決勝ペナルティーゴールを決めることになるのだが、会見では、ロウのプレーに関する質問が集中。エラスムス・ヘッドコーチが応じた。 「ロウは試合に大きな違いを生んでくれた。私たちにとっては、ロウのような選手が活躍してくれてよかった」 南アフリカ代表は、フィジカルを存分に生かし、鉄壁のディフェンスで3度目の決勝進出を決めた。2007年のフランス大会以来、3度目の優勝を目指す。今回の南アフリカ代表は、予選プールでニュージーランド代表に敗北。過去のW杯王者は、予選プールを無敗で通過しているため、南アフリカ代表が頂点に立てば負けながら優勝した初のケースとなる。ただし、南アフリカ代表の決勝戦の勝率は、いまのところ100パーセントだ。 今回のファイナルの相手は、イングランド代表。26日に横浜でオールブラックスこと2連覇中のニュージーランド代表を制した。南アフリカ代表と同様に守り勝つチーム。 その決勝戦をフェルミューレンはこう展望した。 「我々はディフェンスでお互いを助け合うチームです。イングランド代表もご存じの通りディフェンスが強い。そのなかで、我々は我々の強みを出したい」 どちらが強いタックルを放てるか、どちらが倒れた後にすぐに起き上がれるか、どちらが勝負所で、効果的なジャッカルを繰り出せるか。華やかではなくともラグビーらしいファイナルが期待できそうだ。 もうひとつ興味深いのは、敵軍を率いるエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチの経歴である。2007年には南アフリカ代表のチームアドバイザーとして、ディフェンディングチャンピオンだったイングランド代表を決勝で倒して優勝。さらに2015年のイングランド大会では、それまでW杯通算1勝だった日本代表を率いて南アフリカ代表から白星をもぎ取っている。日本にもファンの多い敵将は、南アフリカ代表とも浅からぬ関係を持つ。 「エディーは素晴らしいコーチ。きっと我々のことも分析しているだろう」とは、先発したフッカーのボンギ・ンボナンビ。エラスムス・ヘッドコーチは「イングランド代表がオールブラックスを倒した前日の試合も観たが、かなり強くなっている。相手のチームのスタイルが違う時は、それに対して順応する」と、限られた時間で適切な準備を施すという。 ベンチワークで強みを最大化する指揮官は、当日、南アフリカを知り尽くしているジョーンズ・ヘッドコーチ率いるチームを相手にどんな隊列を組むのだろうか。 注目の一戦は11月2日、横浜国際総合競技場で18時にキックオフである。 (文責・向風見也/ラグビーライター)