東日本大震災から3年、ダライ・ラマ法王14世が東北で語りかけたこと
私は初めて日本を訪問させていただいたのは1967年のことでした。そして、そのときに私は日本の皆さま方にお話ししたことがあるわけなんです。それは何かと言いますと、日本というこの国の中には近代的な科学技術、そして物質的な向上というものが本当に素晴らしく発達した国であるという一面を持っています。しかしながら、その反面で非常に強い、素晴らしい日本の伝統的な面というものが存在します。それは先進的なレベルにおける価値であり、それが神道であり、仏教であり、そのような精神的なレベルにおける皆さまの持ってこられた伝統であるわけなんです。この物質的な面というものと、そして伝統的な素晴らしさというものをぜひ結び合わせていくことができたならば、これは本当に大切なことであり、それを結び合わせることによって、皆さま方は非常に多くのことを成し遂げていけるのではないかということを、皆さま方にそのときにお話ししたことを覚えています。 ですからこのような近代性というものと、そして伝統的な部分というものですけれども、物質的な部分というのはもちろん概念的なレベルにおけるものであり、伝統的な部分というのは精神的なレベルのものに関連してきます。日本の方々、伝統の中には、年配の方々に対する心からの尊敬を表明するというようなこともありますし、非常に素晴らしい親子関係を持っているという部分もあると思います。このようなことは基本的な人間の持っている優れた価値観ではないか。そのように私は感じているわけです。ですから、そのようなお互いに対する敬意、そして愛情や思いやりというものを維持し、ますます高めていくということが非常に大切なことではないでしょうか。 そして日本の友人の皆さんを見ていますと、非常に礼儀正しくて、どこでも何度でも何度でもお辞儀をするわけです。そのお辞儀をするということは、非常にいい背中の運動になるような気がするわけなんです(編集部注:ダライ・ラマ法王14世によるユーモア)。もちろん、このことが自然に成し遂げられている、つまり外面的にそのように他の人たちに対する敬意を表明すると同時に、その気持ちを皆さま方の心の内面においても同じように維持していただきたいと思うわけなんです。心の中ではそのようなことを持たず、単に外面的にお辞儀をしているというだけでは偽善的な人間になってしまうわけなんです。ですから、そのようなことを注意していただきたいと思うのと同時に、また一方では、日本の方々は非常に形式的な部分というものを尊重されるということから、あまりに夷然を正して、しかつめ正しく座っておられる。そして笑いがない。そして笑うときには人工的な笑いというものは、あまり好ましくないのではないでしょうかと思います。