東日本大震災から3年、ダライ・ラマ法王14世が東北で語りかけたこと
もちろん、そういった悲劇が起きてしまうというのは非常に悲しいことであるわけです。しかしながら、昼も夜も常にそういった悲しみのことばかりを考えて、そして心配しているというような状況では、おそらく亡くなってしまわれた親しい方々、友人、家族、そしていとしい人々も、もしかして彼らはすでに天国に行っているかもしれませんけれども、もし残された皆さま方がずっと悲しみを心に維持し続けて生きておられるのをご覧になったならば、きっとそういった亡くなられた方々の気持ちというのも悲しいものになってしまうのではないか。そのような気がするわけです。 ですから、たとえどのような悲しい出来事を体験しなければならなくても、そのようなことを乗り越えて生きていくためには、皆さま方が持っている強い自信と、決意と、勤勉さ、楽天的なものの考え方、親切を語って生きる、そして1人の慈悲深い正直な人間として生きていくということを皆さま方ご自身がしていただけるならば、天国に行っておられる皆さま方の本当にいとしい方々もきっとそれを見て喜んでくださるのではないかと、私はそのような気がするわけです。 そこで、私は今、大して大切なことではないかもしれませんが、皆さま方と分かち合いたいなと思うお話を1つさせていただきたいと思います。それは私自身の人生についてのことです。私の人生の中で、私は16歳のときに自由を失いました。そして24歳のときに自分の国を、祖国を失いました。そして、それから約54年間、私はインドの地において難民としての生活を送ってきたわけなんです。その54年間の中には非常に困難な状況に直面するというような、そういった時代がずっと続いてきたわけです。そしてたくさんのことを非常に一生懸命やってこなければいけないようなこともたくさんありました。 しかし、そのような中で私は決して諦めるということだけはしませんでした。常に希望を持って、諦めずに自分の固い決意と自信と持って頑張るという姿勢を崩すことはなかったわけなんです。 つまり基本的には、まずこの地球という惑星の中で私たちは住んでいるわけですけれども、この地球には約70億人の人間たちが住んでいるわけです。そして、その70億人の人間たちは、私たち自分自身の兄弟姉妹と言える人々であるわけなんです。ですから、もし私たちが困難な状況に直面したりすると、自分以外のたくさんの人が助けの手というものを差し伸べてくれるわけです。日本の方々も本当に、被災されたのちにはお互いに協力し合うというような、互いに助け合いという精神を発揮されて、本当にお互いによく助け合ってこられたがゆえに、今日まで皆さま方が頑張ってこられたのではないかと思うわけなんです。