東日本大震災から3年、ダライ・ラマ法王14世が東北で語りかけたこと
東日本大震災からちょうど3年の節目にあたる2014年、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ法王14世が神社関係者らの招きで仙台市を訪れました。そして「大切なものを失った時、英知と自信を育む方法」と題した特別講演を行い、被災者を含む1600人の聴衆を前に「自分を信じてきっとこの困難を抜け出すことができる。これを自分が乗り越えられるのだというような自信を持つということこそ、私たちがそのような状況から抜け出すことのできる唯一の手段」と語りかけました。 以下、特別講演の全文で、会場の通訳によって日本語に翻訳されたものです。 -------- 今日のトピックは、大切なものを失ったときに、それを支えるためにどのようにして英知と自信を得たらよいかという、その方法論についてお話しするということになっています。そこで、ナーガルジュナが書かれているお言葉の中に、私たち人間はさまざまなときに苦しみに直面したり、あるいはさまざまな困難に直面したりもするわけです。そのようなときに苦しい立場に立ったからといって落胆してしまうと、私たちはそのような状態から抜け出す希望というものを見つけることができなくなってしまうわけです。そのようなときに、私たち人間は、そういう中で自分に自信を持つこと。そして、自分を信じてきっとこの困難を抜け出すことができる。これを自分が乗り越えられるのだというような自信を持つということこそ、私たちがそのような状況から抜け出すことのできる唯一の手段と考えます。 被災者の方々がたくさん見えていると思いますけれども、実際に被災されて、津波などの害を実際に遭われた方、手を挙げてみていただけますでしょうか。そのように実際に被災された方々に対しましては、本当に心から皆さまに慰めたいという気持ちを私自身が持っております。 2年前に私は被災地である石巻市に実際に訪問させていただいているわけです。そして実際に被災された方々にお目にかかり、そしてそういった方々とお話をする機会がありました。そういった方々のお話を伺っていますと、私も本当に涙があふれてきたということをよく覚えております。そのときに被災者の方々に私がお話したことはどういうことかと言いますと、本当に落胆してしまって心配ばかりをしているということは、決して皆さま方のためになることではないということをお話ししたわけです。そのように不幸な気持ちを抱いたままでいつまでもとどまっているというようなことは、皆さま方は十分、地震、そして津波、放射能というような問題で苦しまれている上に、さらに苦しみを加えてしまうようなことにしかなりません。そこで特にそのような状況に立たされたときには、自分自身が自信を持って勇気を振り絞って、なんとしてでも自分の力でこの問題を乗り越えていくのだ、乗り越えていけるのだということをぜひ考えていただきたいということを、そのとき私は被災者の皆さま方にお話をいたしました。