【オンリーワンの宿】国内唯一、旧電波塔にあるアートなホテルに泊まってみた
THE TOWER HOTEL NAGOYA(愛知県)
名古屋の繁華街、栄の久屋大通公園に立つ名古屋テレビ塔は日本初の電波塔であり、この地のシンボルだ。高さ180メートルの鉄塔に、どこか懐かしさを感じるのは、設計した鉄塔建築の第一人者、内藤多仲(たちゅう)が手がけた大阪通天閣(2代目)や東京タワーと雰囲気が似ているからかもしれない。 終戦から9年を経た1954年、戦災を受けた街に、天をつくように立ち上がった当時東洋一の塔は、人々をどれほど励ましただろう。2016年に電波塔としての役目を終え、解体の危機もあったが、市民らの後押しもあって免震工事を施して存続。20年に“観光タワー”として生まれ変わり、ホテルがオープンした。22年には、全国のタワーで初めて国の重要文化財に指定された。
THE TOWER HOTEL NAGOYAはテレビ塔の4・5階にある。コンセプト「ローカライジング」は、この地域で育まれてきた文化・伝統・食材・アートクラフトなどを世界に発信することを目指している。 運営するアメーバホールディングスは、名古屋市内で数多くのレストランやウェデイングを手がけてきた。総支配人の中野毅さんは「テレビ塔存続の危機の噂があった際、弊社の社長がこれまでの事業の経験を生かし、名古屋のシンボルに魅力的な施設をつくりたいと働きかけたことから生まれました」と話す。そして、「私たちは感動を創造する企業です。大切な人と大切な時間をゆっくり過ごしたいというお客様の幸せのお手伝いにやりがいを感じています」と続ける。
客室は15室。緑豊かなパークビューが眼下に広がり、室内を貫くむき出しの鉄骨が、タワーに泊まっていることを実感させる。東海地区にゆかりのある国内外のアーティストがそれぞれの表現方法でプロデュースした部屋は個性的で、「客室も景色も違うから、全室泊まってコンプリートしたい」というリピーターの声もあるとか。ロビーやダイニングにもアートがちりばめられ、ホテル全体が一つのギャラリーのようだ。 レストランの食事は東海3県の海や山の幸を使い、食器はノリタケや美濃焼を用いるなど地産地消と伝統産業にこだわる。大切にするのは、名古屋の新しい起点であることだ。 展望台からの夜景は、日本夜景遺産に認定されるほど美しいと評判だ。営業終了後、展望台は「宿泊者専用」となる。ネタバレになるので詳しくは書けないが、宿泊者だけのサプライズ体験が待っている。 文/仲底まゆみ 写真/青谷 慶ほか THE TOWER HOTEL NAGOYA 電話:052・953・4450 料金:1泊朝食1室4万1000円から 客室:15室 住所:愛知県名古屋市中区錦3-6-15先 交通:地下鉄名城線久屋大通駅から徒歩2分、または地下鉄東山線栄駅から徒歩4分/名古屋高速東新町出口から2キロ ※「旅行読売」2024年6月号の特集「オンリーワンの宿」より