一本まるまる浜焼き鯖、「京は遠ても十八里」いまも昔も都に続く鯖街道
福井新聞といえば、福井県内で発行されている最大の新聞だ。発行部数は20万部。福井県の世帯数が28万だから、ほぼ全世帯が購読していると言っていい。圧倒的なシェアを誇る。そんな安定企業でも、来るべき人口減少社会を考えると、少しでも新規事業として将来に投資しておきたいという気持ちがあるだろう。
東京都中央区銀座四丁目、東銀座にある歌舞伎のすぐ横。2015年11月25日に、福井新聞社が郷土料理店「鯖街道(さばかいどう)」を出店した。 鯖街道というのは、古代から朝廷の食を支えた「御食国(みけつくに)」として知られる若狭と京都を結ぶ街道のことだ。同年4月には、「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群-御食国若狭と鯖街道」として、文化庁の日本遺産第1号に登録されている。 もっとも鯖街道は、若狭から京都に通じる諸街道の総称をいう。小浜から上中の熊川、滋賀県朽木村を経由して出町柳に通じる若狭街道が最も利用され、運搬された物資のなかで、若狭で水揚げされた鯖が有名だったために名付けられた。 生鯖に塩をして街道を抜け、京都に着くころには良い塩加減になっていたという。「京は遠ても十八里」という言葉があるように、若狭と京都は遠いようで近い。若狭の言葉は、越前のそれと違って、京ことばのアクセントが残る。
店を預かるのは、ソーホーズインク代表取締役の園田禎介(ともゆき)さん(43)。「この店には福井の食文化を世に広めていきたいという狙いがあります。昔は京の都(みやこ)に、いまは東の京に鯖を運んでいるというわけですね」と店名の由来を説明する。園田さんは、福井県ではなく福岡県出身。しかし、なぜか言葉には越前の方の訛りがある。 「福井と福岡、よく間違われるんですよ。私の大学時代の友人でビジネスパートナーが福井県出身で、学生のころよく福井に遊びに行きました。言葉はそのせいでしょうね」と笑う。店を任されたのも、そうした縁だった。 店名のせいだろう。鯖専門店だと思って店を訪ねてくる客もいるというが、鯖料理が看板メニューであることには違いない。浜焼き鯖や鯖の棒寿司、鯖のへしこと続く。