一本まるまる浜焼き鯖、「京は遠ても十八里」いまも昔も都に続く鯖街道
若狭湾と三方五湖に挟まれた旧三方町出身の若狭観光連盟事務局長の岩本克己さん(61)は、「僕らが子どものころ、小学校じぶん、50年も前の話です。魚が豊富でね、秋や春に鯖が揚がったというと、浜焼き鯖を親せきが持って来てくれたんです」と話す。 祭りなどで人が集まるときに供されたご馳走で、赤飯と浜焼き鯖を招待した客人に持って帰ってもらったという。 「浜焼き鯖を、食卓に1本置いて、家族みんなでああやこうや言いながら食べました。一人では食べられないですから、自然と家族のコミュニケーションの元になっていたのではないでしょうか。いまでも楽しみとして残っています」と微笑む。 誰が竹串を抜くのか。自分が抜くと、身が崩れてしまいそうだったので、親に抜いてもらうのを見守っていたのもいい思い出だ。 私たちは、鯖は切り身や煮付けで食べるものだと思っているし、実際、そうやって食べることが多い。しかし、一本をまるまる焼くとおいしさが増す。鯖独特の旨味成分が皮の外に逃げないからだという。
さらに岩本さんは、「鯖なら若狭というイメージを作っていきたい」と話す。風光明媚で、水もきれい。歴史も文化もある。いま、若狭では、小浜市や漁協などが鯖の養殖に乗り出している。 鯖は足がはやく、鮮度維持が難しい。刺し身で食べられるのは、水から揚げてすぐのタイミングしかない。養殖ならそれがかなう。 「魚通は、『鯖の刺し身が一番うまい』と言います。脂が乗りすぎないよう、脂の少ないエサで育てているんですよ。小浜でしか食べられない名産に育てていきたい」と岩本さん。
東京の地で、浜焼き鯖を食べてもらい、本物の刺し身を食べに若狭に来てもらいたいというのが岩本さんの願いだ。 北陸新幹線の福井県内の開通は、県を挙げての悲願なのだが、東京から若狭・敦賀までの所要時間は東海道新幹線を使ってもさほど変わらない。京都から敦賀までなら約1時間で行ける。 京の都の文化を支えた御食国・若狭。岩本さんは「時代に応じた鯖街道が全国に伝わり、若狭が注目されるようになりたいですね」と話した。 ---------- 店名:越前若狭 鯖街道 住所:東京都中央区銀座4-13-11 電話:03-6264-7438 定休日:日曜日・祝日