仲野太賀、山田孝之は俳優の“トップランナー” 現場での気遣いに「本当に頭が上がりません」
■名俳優たちがほれこむ“山田孝之のすごみ”とは
――仲野さんにとって、今回の山田さんとの共演はいかがでしたか? 仲野:孝之さんは何度ご一緒しても、本当にほれぼれさせられます。今回の政を演じるうえでのストイックさもそうですし、「用意、スタート」となってからのギアの上がり方には圧倒されっぱなしでした。孝之さんが遠くで芝居をしていて、孝之さんの叫び声を聞きながら野村周平と「何なんだろうね、あの人のすごさは」としみじみ語り合っていたくらいです。演じるというよりも“生きる”を全うしている姿が圧巻でしたし、最初から最後まで勉強になることばかりでした。 また、これはぜひお伝えしたいことなのですが、過酷な撮影のなか当初は“通い”だったんです。そこを孝之さんが俳優部に配慮して合宿所を借りてくださって、僕たち賊チームはそこで寝泊まりしながら現場に通うことができました。そうした環境を整えていただいたことがとてもありがたく、孝之さんには本当に頭が上がりません。精神的にも肉体的にもフォローしていただいて、現場の空気を完璧に作ってくださったのは孝之さんのおかげです。本当に感謝しています。 ――山田さんは『デイアンドナイト』をはじめプロデュースワークも経験されていますが、だからこそ、合宿所の手配にすぐ動けたのでしょうか。 山田:最初はそこまで考えていませんでしたが、ロケ地が千葉の南側だったので撮影の行き帰りにアクアラインを通るわけです。しかも基本朝か夕方に通るから、大渋滞してしまうんです。合宿所があるかないかで1日の睡眠時間が2~3時間変わるのなら絶対にあった方がいいし、やっぱり危ないですよね。朝まで撮影して自車自走で帰る方もいますから。我々賊軍はずっと一緒にいる設定なので、同じ飯を食って同じ空間で寝ることで魂レベルで深くつながっていけると考えました。 東京やその近郊で撮影すると毎日自宅に帰ることになりますが、やはり地方でホテルに泊まり込みの状況とはリセットの具合が全く違います。場合によっては多少大変でも毎日自宅に帰る方がいいかもしれませんが、今回は毎回リセットしない方がうまく作用する感覚もあり、「とりあえず借りておきます。泊まりたい人は泊まってください。他のお仕事もあるでしょうから各自の判断にお任せします」といった感じでした。 通常だったら都内から1時間で行ける距離ですから、通いという方法を取ったのもわかります。賊軍だけでなく官軍も含めて3~4ヵ月ホテルを抑えたら、大体予算がいくらぐらいに膨れ上がるか想像がつきますから。そんななか今回は地元の方々にもたくさん協力していただきました。観光地でもあるので、ずっと同じ場所は抑えられませんでしたが、民泊を行っている方々が連携してくださって「ここからここの期間はこの施設で、ここから先はこっちで」と調整してくれたり車を貸してくださったりと皆さんに随分助けていただきました。 仲野:地元の人との連絡や根回しも全部孝之さんが取ってくださって、「ここまでやってくれるのか」と感銘を受けました。地元の方々にご飯やお酒をいただくこともありましたし、本当にいろいろと気遣ってくれました。 (取材・文:SYO 写真:上野留加) 映画『十一人の賊軍』は全国公開中。