甲子園”最高の決勝戦”の背景にあったキャッチャー2人の「最高レベルの技術」
第106回全国高校野球選手権大会(阪神甲子園球場)は、京都国際(京都)の初優勝で幕が下りた。センバツでも健大高崎(群馬)が初優勝。甲子園100周年のメモリアルイヤーでの優勝は、球史に残るだろう。 【トーナメント表】夏の甲子園 結果一覧 大会を振り返ると、守備の重要さを改めて思い知らされた。夏の甲子園といえば、打ち勝つ野球ができるチームが強いという印象だったが、新基準のバットとなり、本塁打もわずか7本に終わるなど、長打は期待できない時代に突入した。新しい高校野球の基準で勝つチームになるためには、守備力を向上することが近道かもしれない。 これまで届かなかった内野ゴロが届いたり、追いつけないと思っていた外野の飛球が追いつけたり。野手の守りのレベルが高ければ高いほど、その「球際」の強さが際立つ。失策をしない堅い守備というより、もっとアグレッシブに処理してアウトにできる野手がどんどん育つ時代に入るのではないか。 もうひとつ、好捕手が多かったことも印象に残った。この日決勝戦に挑んだ京都国際の奥井 颯大捕手(3年)はキャッチングが上手かった。169センチ、68キロと小柄な体格をさらに小さく構えて、投手の制球力を引き出させる「小さな的」になって、低めの球でも巧みなフレーミングで投手を助けていた。中崎 琉生投手(3年)と、西村 一毅投手(2年)をリードする重要な役目も担っていた。複数投手制が主流となった現代高校野球では、捕手も複数投手の癖、特徴、性格などをつかんでリードしていく必要がある。まるでプロ野球の世界のように、捕手のレベルアップが要求される。奥井はそれを体現していた。 敗れた関東一の熊谷 俊乃介捕手(3年)にも、同じことが言える。こちらは180センチ、83センチの大型捕手で、打撃もいいのが特徴だが、京都国際の奥井とは逆に「大きな的」となって投手を導いていた。大きなジェスチャーと投手を言葉で鼓舞して、3人の投手をうまくリードしていた。牽制球で一塁走者をアウトにするなど、総合的な守備力ではトップレベルと言える。 関東一のバッテリーには誇れる数字がある。当たり前だと思われるかもしれないが、今大会5試合で暴投、捕逸のバッテリーエラーはゼロだった。実は、今センバツのタイブレークの末に敗れた試合で、坂井 遼投手(3年)が暴投を記録していた。投手はもちろん、捕手もワンバウンド投球を後ろにそらさない技術も求められている。関東一は決勝戦までバッテリーエラーはひとつもなかった。 投手だけでなく、捕手をはじめ、野手の「守備力」が勝敗を分ける大きな要素となる時代になってきたのではないか。甲子園100周年の今夏は、その「元年」になる。