“通話できるApple Watch”で注目、「eSIM」をめぐる3つの疑問
ではなぜ、Apple Watch Series 3はこのような機能が実現したのでしょうか。そのキーとなる技術が、eSIM（embedded SIM）というものです。 スマートフォンが通話やデータ通信をするためには、契約者情報や電話番号などがインプットされている「SIMカード」が必要になり、これは回線契約をした携帯電話会社が発行します。しかし、物理カードの場合はどんなに小さくなってもデバイス側にある程度の大きさのカードスロットが必要になり、スマートフォンやタブレット以外の小型デバイスへの展開が難しいという課題がありました。もちろん、薄くて小さいApple WatchにSIMカードスロットを搭載することは難しいと言わざるを得ません。 これに対して、今回Apple Watchが採用したeSIMでは、物理的なSIMカードを必要としません。eSIM対応デバイスの中には契約者情報や電話番号などをインプットするSIMカードに相当する半導体チップがあらかじめ内蔵されており、携帯電話会社は契約者情報を管理するために構築した「eSIMプラットフォーム」というデータベースを通じて、ユーザーのデバイスにSIMカードの中身に相当する情報を遠隔で書き込みます。これにより、SIMカードが挿せないような小さいデバイスでも、通話機能やデータ通信機能を持つことが可能になるのです。
eSIMの手続きをめぐる疑問、携帯電話会社に聞いてみた
ところで、このeSIMを巡っては、ユーザーがある程度自由にデバイスに抜き挿しして使える従来のSIMカードとは違い、携帯電話会社が運用するeSIMプラットフォームがデバイスに遠隔アクセスして契約情報を書き込むため、携帯電話契約に関する手続きでいくつかの疑問が生まれてきます。近い将来生まれるかもしれないいくつかの疑問について、各社に聞いてみました。
（1）ナンバーポータビリティを利用する場合にはどうするの？ まずは、セルラー版のApple Watch Series 3を購入後にナンバーポータビリティ（MNP）を利用して携帯電話会社を変える場合には、どうするのでしょうか。 Apple Watchとセットで使用するiPhoneは、SIMロックが解除されていれば、解約する携帯電話会社のSIMカードを返却して、新しい携帯電話会社のSIMカードを挿すことで引き続き使用可能です。 NTTドコモ、KDDI（au）、ソフトバンクの各広報部に確認したところ、3社ともに「親機であるiPhoneの契約を他の携帯電話会社にMNPで移動する場合には、Apple Watch のeSIMに登録されていた旧契約情報は抹消することになり、新しい携帯電話会社で契約情報を書き換えれば使用可能になる」とコメントしています。 eSIMプラットフォームは、ドコモ、KDDI、ソフトバンクがそれぞれ独立して運用されていますが、基本技術はeSIMに関する国際規格に準拠しています。そのためMNPで携帯電話会社を移動する場合には、旧携帯電話会社で契約情報を抹消したのち、新携帯電話会社で情報を更新するという作業が可能になるようです。
