少数与党の石破政権、小売りや電力株に追い風か-防衛株は不透明
勝者と敗者
国民民主党が公約に掲げた、所得税が発生する「年収の壁」を103万円から178万円に引き上げるという政策が実現すれば、小売企業が恩恵を受ける展開が予想される。この政策は、若年層やパートタイム労働者の手取り収入を増やすことになる。
国民民主の玉木雄一郎代表が10月31日、103万円の引き上げができなければ予算にも法案にも協力できないと自身のX(旧ツイッター)に投稿すると、同日の東京株式市場で良品計画やマツキヨココカラ&カンパニー、しまむらなどの消費関連銘柄の株価は1.2%以上値上がりした。その日の東証株価指数(TOPIX)は0.3%下落した。
自民党は非課税所得上限の引き上げについて現実的な議論には応じる姿勢を示しているが、税収が大幅に減ることへの懸念も表明している。アイザワ証券の河西幸弘シニアストラテジストは「『年収の壁』引き上げに向けて実際に道が開ければ、百貨店やスーパーなどの銘柄は上昇余地が生まれる」と話す。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、一部野党の原発推進姿勢はエネルギー関連企業の株価にも追い風だとみている。
「国民民主党は原発に対して否定的ではないので、今まで進めてきた原発再稼働の流れが止まりそうだという印象を持たなくて良い」と同氏は話す。自民党の有力な連携候補である日本維新の会も原発の利用を支持している。
東証業種別の電気・ガス業指数は、衆院選明けの1週間に4.4%上昇し、TOPIXの1%高をアウトパフォームした。10月29日には11年の東日本大震災で被災し13年超止まっていた東北電力の女川原子力発電所2号機が再稼働し、同セクターはさらに上昇した。
自民党を中心とする政府は、11年の福島第一原子力発電所の事故以来、ほぼ休眠状態にある原子力産業の復活を目指している。自民党の最大のライバルである立憲民主党はこれに反対しているが、T&Dの浪岡氏は国民民主やその他の政党の支持があれば、与党はこの政策を推進できると予想。「電力関連株は上昇しそうだ」と言う。