「ドライアイの男性」は歯周病に要注意? 歯科医師が明かす「意外な研究結果」と「万全の予防策」
歯周病の口臭が強く臭う理由は?
口臭は、誰にでもある「生理的口臭」と歯周病が原因となる「病的口臭」に大別されます。 前者の生理的口臭は、舌表面の汚れ(舌苔)の中の口臭菌が出す硫黄水素が原因で「ゆで卵」のような臭いがします。一方、後者の病的口臭は、歯周病でメチルメルカプタンが放出され「台所の三角コーナー」のような腐った強い臭いが特徴です。 ちなみにメチルメルカプタンは、日本では毒物に指定され、許可なく勝手に持ち運ぶことが禁止されています。このことから、歯周病がいかに毒性が強い疾患であるかが想像できると思います。 口腔内には約700種類の細菌が常在していますが、これらは空気に触れて生活する「好気性菌」と空気から隠れて生息する「嫌気性菌」に大別することができ、歯周病菌は後者に属します。 歯周病と関連する菌(フソバクテリウム・ヌクレアタム、Fusobacterium nucleatum)がメチルメルカプタンを産生するのですが、この菌が歯の表面に付着してプラーク(細菌の塊)を形成する別の菌(ストレプトコッカス・ゴルトニイ、Streptococcus gordonii)と共生すると、メチルメルカプタンの生産量が3倍にも増えてしまいます。 口臭にとって最悪とも言えるこの関係は「口臭増強機構」と呼ばれています。 ストレプトコッカス・ゴルトニイはプラーク形成の初期段階で関与するので、プラーク形成前に菌を除去すれば「口臭増強機構」は働かず、強い口臭を防ぐことができます。プラークは食後数時間で形成されるので「食べたら歯を磨く」ことの基本を心がけることが大切です。 また歯周病は歯のセルフケアでは治すことができないので、歯周病が発症する40歳以上の人は定期的に歯科医院での歯周病対策(プロケア)を受けることをオススメします。
歯周病予防は心臓病のリスクも減らす
心臓の脈拍のリズムがおかしくなった状態を不整脈と言い、最も有名な脈が早くなる状態が「心房細動」です。脳卒中や心不全のリスクを高め、心不全患者に最も多く併発している不整脈と言われています。 この心房細動治療の一つに心筋の一部を焼却するアブレーションという方法があり、特に高周波を用いたラジオ波アブレーション(RFCA)は心房細動の根本治療が期待できます。動悸、息切れ、疲労などの不快な症状がなくなって、生活の質が画期的に改善します。 術後は薬物治療が不要になる場合もあり、注目を集めている治療法です。しかし、10~39%の確率で再発することが知られています。 広島大学保健管理センターが行った、RFCA治療後の心房細動の再発抑制と歯周病との関連調査では、RFCA治療後に歯周病治療を行うことによって心房細動の再発率が低下することが判明しました。特に歯周病が進行している患者ほど効果が大きいことが分かりました。 これまでの研究では、口腔衛生が不良になると血中に細菌が侵入し、さらに全身へ炎症をもたらすので、心房細動や心不全のリスクが上昇することが分かっています。しかし、1日3回以上の歯磨きをすることで心房細動リスクが10%低下、心不全リスクが12%低下します。 これらのことから、歯周病治療をはじめ歯・口の衛生状態を良好に保つことは心臓の保護につながる可能性があると言えるでしょう。