加部究のフットボール見聞録「国際基準はフェアプレーよりも…それでも日本は“正論”を優先させるのか」
「ジーコはファウルを誘う術も実に巧妙だった」
スペインW杯でジェンティーレと高度な“心理戦”を繰り広げたジーコ。ブラジル人ならではの狡猾さが光った。(C) Getty Images
だいぶ古い話になるが、卒業旅行中にパリ市内の駅のプラットフォームで老婦人と居合わせた。彼女は見ず知らずの僕に「ちょっと荷物を見ていて」と言い残すと、ミニトランクを置いてその場を離れてしまった。日本人への過剰な信頼ぶりに驚いた。 数日前にはローマのテルミニ駅で、友人が貴重品すべてを盗まれたばかりだった。彼が警察に盗難届けを出している間に、現場ではイタリア人の巧妙な流れ作業を目の当たりにした。ひとりが衣服にアイスをつけて気を引き、もうひとりが財布を掏ると、即座に公衆トイレの屋上で待つ仲間に投げ渡していた。 1982年のスペイン・ワールドカップでは、対ブラジル戦でジーコのマークを託されたイタリアのDFクラウディオ・ジェンティーレが痺れるような心理戦を繰り広げていた。イタリア代表のエンツォ・ベアルゾット監督は、「ジーコの影より近くにいろ」と送り出した。 しかし、そのジー
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