なぜ森保監督は反撃の手を打たなかったのか…チュニジアに0-3惨敗
森保ジャパンが0-3の惨敗で6月の強化マッチ4連戦を終えた。14日にパナソニックスタジアム吹田で行われたチュニジア代表との国際親善試合で、後半にキャプテンのDF吉田麻也(33、サンプドリア)のミス絡みで3ゴールを献上。放った6本のシュートはひとつも枠をとらえられなかった。開幕が約5ヵ月後に迫ったカタールワールドカップへ、流れを変えられなかった森保一監督(53)の采配があらためて不安視される結果と内容になった。
「チュニジアは明らかに(遠藤)航のところを潰しにきていた」
どこか他人事のように聞こえてならなかった。 ホームで無残な敗戦を喫したショックが漂う試合後のオンライン会見。前半からアンカーの遠藤航(29、シュツットガルト)が狙われ、ボールを失うやいなやショートカウンターを浴びた試合展開に、森保監督は驚くほど淡々と言及している。 「明らかに(遠藤)航のところを潰しにきていた。今後(の対戦チーム)も同じような狙いを持って、われわれの意図するところを潰してくると考えられるなかで、いいシミュレーションになったと思っています」 チュニジアの狙いがわかっていても、吉田が与えたPKで後半10分に均衡を破られても、森保監督は手を打たなかった。 システムを4-3-3から4-2-3-1に変え、遠藤と田中碧(23、フォルトゥナ・デュッセルドルフ)でダブルボランチを組ませたのは後半26分だった。しかし、時すでに遅し。5分後の同31分に、再び吉田のミスから追加点を奪われた。 何をもってシミュレーションと位置づけたのか。森保監督は「われわれの強みを消されたときに、違うオプションを出さなければいけない」と語った。選手たちの対応力を見極めたかったのかもしれないが、強化が目的の国際親善試合とはいえ、ホームで戦う以上は勝利を目指すと意気込んでいたのは森保監督自身だった。 対照的に6度目のワールドカップとなるカタール大会で、初のグループリーグ突破を目指すチュニジアのジャレル・カドリ監督は「日本を研究してきた」と胸を張った。 「日本は中盤で早いボール回しができるので、中盤でスペースを与えないことにまず留意した。弱点があるとすれば守備。ディフェンス陣は難しい状況に置かれるとミスをする。なので、ボールを裏につける攻撃を意識した」 くしくも2002年の同じ6月14日。場所も同じ大阪で行われたワールドカップ日韓共催大会のグループリーグ最終戦で日本に0-2で完敗を喫し、目の前で決勝トーナメント進出を決められた。20年越しの借りを、吉田のミスから発動させたカウンターで後半アディショナルタイムにも1点を追加する快勝劇で鮮やかに返してみせた。 ならば森保監督は明確な狙いを持って、6月の強化マッチ4連戦を締めくくるチュニジア戦へ臨んだのか。残念ながら答えはノーと言わざるをえない。 他の選手たちとは異なり、吉田と遠藤は6月シリーズですべて先発してきた。代役の利かない存在となる2人の異変に、実は気がついていたと指揮官は明かしている。 「ヨーロッパで長いシーズンを戦っての代表戦で疲労が来たのかなと。ワールドカップ本大会を踏まえても、彼らのパフォーマンスが落ちることも考えられる」 それでも遠藤も吉田も最後までプレーした。6月シリーズと同じく中3日で戦う、カタール大会をにらんだシミュレーションだったのかもしれない。しかし、故障するリスクもあったと考えれば、チュニジア戦で無理をさせる必要はなかった。 遠藤と吉田がオーバーエイジで参戦した昨夏の東京五輪が思い出される。グループリーグ初戦から3位決定戦までの6試合を、すべて中2日で戦った過酷なスケジュールで2人は全試合に先発している。グループリーグで破ったメキシコに返り討ちにあい、4位に終わった大会後。テレビ番組に出演した吉田はこんな言葉を残している。 「大会を通して言うと、6試合を戦う上で、できればローテーションしてほしかったな、と。最後の試合は僕もそうですけど、選手たちがかなり疲弊していたし、疲労からくる判断力や集中力の欠如というものがあったと思うんですよね」 吉田と遠藤だけではない。堂安律(23、PSV)と久保建英(21、マジョルカ)、田中、GK谷晃生(21、湘南ベルマーレ)も全6試合に先発している。メンバーをある程度固定する森保監督のさい配はJ1リーグ戦を3度制したサンフレッチェ広島時代から顕著で、東京五輪に臨んだU-24代表、そしてA代表にも引き継がれている。