最速153キロ完封発進の星稜・奥川にプロスカウトが絶賛の嵐「巨人・菅野のような完成度」「ヤ軍・マー君を彷彿」
石川大会では、2試合に先発、2試合にリリーフ登板して、24イニングで40奪三振、16安打、5失点という内容で4季連続の甲子園出場を決めた。だが、本調子には、ほど遠いピッチング内容だったという。 その一因は投げ込み不足による調整遅れ。そのため投球フォームが安定していなかった。疲れもあり8月3日までピッチング練習を封印していた。本人も「いまのところフォームはバラバラ」と告白したことから一部報道では不安説も流れたが、それもこれも注目度の高い投手だからこそ。実際は、その8月4日のブルペンで感覚を取り戻していた。星稜野球部の山下智茂名誉監督も、大会前に「頭のいい選手だし、本番に強いタイプだから大丈夫でしょう」と期待を寄せていたが、その言葉通りに本番に調子を合わせてくるあたりは只者ではない。 敗れた旭川大高の端場雅治監督は奥川について「北海道にこんな素晴らしい投手はいない」と最大級の賛辞を送った。 ネット裏には、メジャーリーグを含めた全球団のスカウト陣が揃いその投球に注目していた。その声は絶賛の嵐。 「ヤンキースのマー君を彷彿とさせる」 「完成度が高く巨人の菅野に似たタイプだ」 ソフトバンクの永井編成・育成本部長は、奥川が投げる試合では、わざわざ席を移動して熱視線を送っていた。 「いい投手ですね。何よりの良さは球を操れる能力が高いこと。この時点で出し入れができているし、欠点のないタイプ。いま、うちのローテで5、6番手で投げているとどうなるかと想像したくなる。体に芯が入れば、球質も制球力も良くなる。トップクラス」と断言。 球団も北陸地区には星稜OBでもある山本省吾スカウトを”奥川番”に配して徹底マークしているところだ。
元ヤクルトのスカウト責任者だった片岡宏雄氏は、センバツからの成長点を評価した。 「安定感が出てきた。ストレートは150キロをキープしてコントロールに苦労しない。いわゆる勝てるピッチャー。体の出来具合も含めて、高校生でありながら即戦力に近い。マー君の高校時代に比べると見劣りはするが、今大会で間違いのないドラフト1位候補だろう。欲を言えば、変化球にキレが出てくれば、さらに完成度が高まる」 昨夏は2回戦の済美戦で足がつり、緊急降板。チームは延長13回タイブレークの末、逆転サヨナラ満塁弾を浴び、壮絶に散った。今春のセンバツでは、習志野戦で好投しながらもサイン盗み疑惑に動揺して2回戦で敗れた。だが、今夏は、イニングの合間に水分と塩分を効果的に補給するなど、同じ過ちは繰り返さない覚悟。もともと、マウンドさばきは評価されていたが、精神面でもたくましくなった。 次に奥川が登板するのは13日の立命館宇治戦。集大成と位置づける最後の夏、目指すは星稜初の日本一。「自分たちの成長を見せたい」。奥川は夢の実現へ向けて好スタートを切った。