最速153キロ完封発進の星稜・奥川にプロスカウトが絶賛の嵐「巨人・菅野のような完成度」「ヤ軍・マー君を彷彿」
たった1球で甲子園の観客を魅了した。 7日、大会2日目の第3試合。「高校BIG4」の中で唯一、聖地にたどりついた星稜(石川県代表)の奥川恭伸が、北北海道代表の旭川大高戦に先発。1番打者、佐藤一伎への4球目のストレートが150キロを示すとスタンドが「おお!」とどよめく。そして、次の1球にどよめきが驚愕の歓声に変わる。さらにもう一段ギアをアップ。自己最速に並ぶ153キロが外角高めにズバッ。佐藤はミットにボールが入ってからスイングしたかのような空振りの三振に倒れた。 続く持丸泰輝は変化球で簡単に追い込み、ファンの気持ちをくんだかのような3球勝負。外角低めにうなるような151キロのストレートを決める。持丸は微動だにできなかった。 3番の菅原礼央に対しては力ではなく技。抜いたスライダーで追い込むと、この夏に向け、マスターした曲がりが少なくストンと落ちる131キロのスライダーで空振りの三振。三者三振という最高の形で、奥川の最後の夏が始まったのである。 実は、三者三振は狙って奪った演出だった。 「立ち上がりに球場の雰囲気を持ってこられたのは何より。9イニングの中で一番良かった」とは、試合後の回想である。 2回以降もペースダウンはしない。コンスタントに140キロ台後半のストレートをマークする一方で、意識的にスピードを落としたストレートも使った。さらに2種類のスライダーと、スプリットなどをコーナーに投げ分け、この先を見据えて球数を無駄にしない。 味方打線は2回に1点を先制したが、送りバント失敗などの拙攻もあり、最後までリードはわずかに1点というシビアな展開が続いたが、5回以降は相手にヒットを1本も許さなかった。 わずか94球の省エネ投球で3安打、9奪三振で完封一番乗り。9回には再び151キロをマークし、余力があるところもさりげなくアピールしたが、クレバーな右腕は満足はしていなかった。 「勝ち切れたのは良かったのですが、反省すべき点もありました。結果だけを見るのではなく、内容を見つめ直さないといけません」 そのひとつが9回に「最も警戒していた打者」の持丸泰輝に大きなライトフライを打たれた場面。「風に助けられたんです」。確かに快音を発した打球は、逆風に押し戻されていた。