あなたの知らない札幌《酪農と乳の歴史館》後編 命の大切さを伝えたい
【北海道・札幌】人口200万人の声も聞こえる北の大都市・札幌。その札幌には、多くの観光地や名物施設があります。とはいえ、札幌市民ですらそれらのすべてを知っているわけではありません。そこで「あなたの知らない札幌」と題した企画をスタート。第9回後編は、「酪農と乳(にゅう)の歴史館」(札幌市東区)の館長・猪狩章博さんに、同館を通じて伝えていきたいことについて伺いました。(取材・構成/橋場了吾)
北海道限定!『カツゲン』にまつわる秘密
北海道限定の乳製品『カツゲン』の名前を冠した「勝源神社」は、同館の受付横に設置されています。以前は工場見学コースの奥の奥にあったのですが、あまりにも問い合わせが多いことから、すぐに参拝できる場所に移動しました。 ちなみにもともとの「カツゲン」は、「活力の給源」を略して「活源」と名付けられました。発売は1956(昭和31)年ですから、今年で60周年を迎えました。『ソフトカツゲン』というプレーンタイプのものがメインですが、毎年「マスカット」「みかん」などフレーバーが違う商品も発売されます。実はフレーバー担当の職員がいて、毎年考えに考えて新製品を世に送り出しています。
技術革新が見て取れる展示の数々
「酪農と乳の歴史館」には、勝源神社のほか北海道の酪農・雪印メグミルクの歴史をパネルにしたものや、当時使用していた機械・資料・写真などを展示しているので、札幌の小学校・中学校の生徒が授業の一環でやって来ることが多い場所でもあります。もちろん、一般の方も無料で入場できます(要予約)。 以前使用していた機械は、日本のバター作りに大きな影響を与えたデンマークを中心としたヨーロッパのものが多く、技術革新の凄さも展示でわかっていただけると思います。かつては何時間もかけて重い機械を回転させて製造していたバターですが、今ではわずか3秒でできてしまいます。そのバターや牛乳を北海道から東京へ運ぶ場合は、コンテナの半分がドライアイスで埋まっていました。もちろん今は空輸ができますので、そんなことはありません。先人が苦労してきたからこそ、今の北海道の酪農の発展があるのだと思います。 また1500冊ほどの専門書も所蔵していて、某大学教授も3日缶詰めになって論文を書いていたというエピソードもあります。この図書閲覧コーナーはあまり知られていないのですが、リスト化しているので簡単に本を探せますし、希望があれば無料で貸し出しもしています。